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2026年3月号: カスハラ対策の義務化について

L+PRESS 2026年3月 PDFで見る

カスハラ対策の義務化について

近年、カスタマーハラスメント(略称カスハラ)は、社会問題として意識されることが増え、店舗や医療機関などでカスハラ防止に関する掲示物を見かけることも多くなりました。カスハラが労働環境を悪化させる主要な原因となっていることを受け、令和7年6月に労働施策総合促進法の改正が行われ、令和8年10月1日から、事業主に、雇用管理上、カスハラ(顧客等言動問題)防止のために必要な措置を講じることが義務付けられることになりました。

労働施策総合促進法においては、以下の3つを満たすものが「カスハラ」とされています。①職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの、③当該労働者の就業環境を害すること。具体的にどのような言動がカスハラに該当するのかについては、厚生労働省の「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」などに例が記載されています。

事業主に義務付けられている措置は、労働者からの相談に応じて適切に対応するために必要な体制を整備すること、労働者の就業環境を害する顧客等の言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置を講じることなどがあります。具体的には、カスハラを想定した事前の準備として、①カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化して労働者に周知・啓発する、②カスハラの内容及び予め定めたカスハラへの対処の内容を労働者に周知する、③相談窓口を予め定めて労働者に周知する、④相談窓口担当者が適切に対応できるようにする、⑤特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針を予め定めて労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備することなどが挙げられます。また、実際にカスハラが起きた際の対応として、⑥迅速かつ正確に事実関係を確認する、⑦速やかに被害者となった労働者に対する配慮のための措置を適正に行う、⑧再発防止に向けた措置を講じる、⑨相談した労働者のプライバシー保護措置を講じ、不利益な取扱いをしないことを定めて労働者に周知することなどが挙げられます。

人手不足解消のためにも、労働者に安全・安心な労働環境で働いてもらえるよう令和8年10月1日からの施行に先んじて、厚生労働者の指針を参考にしながらカスハラ対策を進めることが重要です。

なお、労働施策総合促進法は事業主のみならず、労働者と顧客等にもカスハラに対する関心と理解を深め、必要な注意を払うことを努力義務としています。

齋藤 碧(さいとう みどり)
【かしま法律事務所】
所属弁護士:齋藤 碧(さいとう みどり)

プロフィール
山形大学人文学部総合政策科学科卒業、大阪大学大学院高等司法研究科修了。主に、交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に、法的な問題でお困りの方の手助けができるよう活動を行う。趣味は植物を育てること、読書、音楽鑑賞、好きな言葉は「地に足をつける」。

交通事故解決事例

1 事案の概要

Xさんは、自動車を運転中、信号待ちで停車していたところ後続車に追突されました。むち打ちで6カ月通院し、保険会社から賠償額計算書・示談書等が届きました。離れて暮らす息子さんに相談したところ、以前に別の交通事故示談交渉をご依頼いただいた息子さんから当法人をご紹介いただき、Xさんも弁護士費用特約を使ってご依頼いただくことになりました。

2 保険会社の提案内容と交渉方針

問題点は、①通院慰謝料が低額なほか、②一人暮らしで農業を営まれるXさんの休業損害が認定されていないことでした。
Xさんは、時間のかかる裁判は望まず、適正な範囲内の早期解決をご希望でしたので、②については、前年の確定申告書・収支内訳書から一定額を請求しつつも、家事消費分を含むことや実際に減収したわけではないこと等も考慮して柔軟に減額調整に応じ、迅速に①と②の総額を伸ばすことにしました。

3 自営業の休業損害と交渉結果

いわゆる自営業の休業損害については、売上から経費を引いた上で固定経費(休業中も事業継続・再開のために支払いを継続せざるを得ないもの)を足し戻すという算定方法が裁判実務の大勢と言ってよいと考えられます。具体的な固定経費の範囲は、事業の種類等によりますが、裁判例を見る限りばらつきも多いところです。本件では、自賠責基準の日額よりも低額になることが見込まれるため、少なくとも一部は変動費となりそうな水道光熱費や修繕費もひとまず全額を固定経費に含める形で請求額を算定しました。
ただ、確定申告・収支内訳書に基づく相応の根拠・説得力がある(とこちらが思う)計算であっても、交渉=話し合いにおいては、一方的に正当性を主張するだけでは中々まとまりません。万が一、裁判になれば、家事消費の割合や現実の減収がない(あるいは通院日数に比例した減収がないと考えられる)点などが考慮されて請求全額は認容されないリスクが高く、さらに休業損害が争点の訴訟では収支関係資料の提出を度々求められるなどお手間を取らせてしまうのが通常です。そこで、早期解決がご希望である場合はこれらも考慮して現実的な(ある意味相手方担当者の顔も立てる)落としどころを探す(そのためのバッファも持たせた初回請求を検討しておく)必要があります。通院回数がかなり多く、現実の減収もない本件でも、10万円でも認められれば十分だというXさんとの事前打ち合わせに基づき、請求額の30%だけ譲歩する形で30万円余りでまとまり、適正な早期解決ができたと思います。
最終的には、①の通院慰謝料と合わせると、受任前の保険会社提案額に対して2倍の増額となりました。

上田 和裕(うえだ かずひろ)
【上野法律事務所】
所属弁護士:上田 和裕(うえだ かずひろ)

プロフィール
早稲田大学政治経済学部卒業。大学卒業後は電機メーカーに就職し、より専門性が高い仕事をしたい、職人としての誇りが持てるようになりたいと思い、転職を経て法曹を目指す。現在は上野法律事務所に所属し、依頼者の利益を最優先に思考し行動することを心がけている。好きな言葉は「人事を尽くして天命を待つ」。

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