ニュースレター

2026年4月号: ストレスチェック全事業場義務化へ 法改正の背景と「50人未満」企業への実務対応

L+PRESS 2026年4月 PDFで見る

ストレスチェック全事業場義務化へ
法改正の背景と「50人未満」企業への実務対応

近年、労働関連法令のアップデートが相次ぐ中、安全配慮義務に直結する極めて重要な法改正が2025年5月に可決・成立した改正労働安全衛生法です。本コラムでは、長らく「努力義務」とされてきた従業員50人未満の事業場に対する「ストレスチェックの実施義務化」に焦点を当て、法務として今すぐ着手すべきリスクマネジメントの要点を解説いたします。

1 なぜ今、全面義務化なのか?改正の背景

ストレスチェック制度は2015年に創設され、従業員50人以上の事業場には年1回の実施が義務付けられてきました。しかし、50人未満の事業場では「努力義務」に留まっていました。今回の改正の背景には、精神障害による労災支給決定件数が過去最多を更新するなど、深刻化する職場のメンタルヘルス問題があります。厚生労働省の調査によると、50人以上の事業場でストレスチェックの実施率が約85%に達する一方、50人未満では約32%と低迷していました。小規模事業場における対策の遅れが浮き彫りとなる中、企業規模に関わらず働く人の心の健康を守る必要性が高まり、全面義務化へと踏み切られたのです。

2 法改正の概要と施行スケジュール

改正法は2025年5月14日に公布され、施行日は「公布後3年以内」と定められました。したがって、遅くとも2028年5月までには、全事業場でのストレスチェック実施が法的義務となります。今回の改正では小規模事業場の負担に配慮し、十分な準備期間が設けられています。とはいえ、対象となる労働者の選定や情報管理体制の構築には時間を要するため、期限を待たずに計画的な導入を進めることが推奨されます。

3 50人未満事業場の課題と対応策

50人未満の事業場における課題は、「産業医の選任義務がない」点です。専門職が不在の中、従業員の機微な個人情報であるチェック結果をどう管理するかが問われます。 厚生労働省は、 プライバシー保護の観点から「外部機関への委託」を原則推奨 しています。また、高ストレス者から申し出があった場合の医 師による面接指導については、全国の「地域産業保健センター (地産保)」を無料で活用することが可能です。
ここで法務部門が果たすべき役割は、外部委託先との契約内 容(セキュリティや情報管理体制)の精査に加え、社内規程の 整備です。結果や面接指導の申し出を理由とした不利益取扱い は法律で厳格に禁止されているため、これらのルールを明文化 し、全社へ周知徹底しなければなりません。なお、50人未満の 事業場では労働基準監督署への結果報告は不要です。

4 全社的ガバナンスの再構築を

今回の義務化拡大は、国が企業に求める「安全配慮義務」の基準が一段引き上げられたことを意味します。万一メンタル不調による労災や休業が発生した場合、体制の不備は企業の損害賠償リスクに直結します。施行のタイムリミットを見据え、人事部門と連携し、今すぐ持続可能な管理体制の構築に着手してみてはいかがでしょうか。

永井 龍(ながい りゅう)
【津田沼法律事務所】
所属弁護士:永井 龍(ながい りゅう)

プロフィール
立教大学法学部卒業、法政大学法科大学院修了。弁護士登録以降、東京都内の弁護士事務所で一般民事や家事事件などの分野で執務。現在は津田沼事務所で、交通事故、労災事故、離婚・不貞問題、相続などを中心に、「弁護士」という与えられた資格の職責を全うすることで、ご依頼者様の人生がより豊かになることを目指して活動を行う。趣味は写真撮影、好きな言葉は「正直」。

後妻が主張する「不動産の独占」を打破し、
換価分割で公平な解決を実現した事案

事案の概要
相続人は、ご依頼者である被相続人の長男と被相続人の後妻の2名でした。
当事者同士の話し合いの中で、預貯金などの金融資産については、法定相続分通り2分の1ずつ分けることで合意が進められていました。
しかし、問題となったのは相続財産評価額の大部分を占める自宅不動産でした。後妻は「この家には私が住み続ける。家はすべて私が相続するのが当然だ。」などと主張し、分割を拒んでいる状態でした。
ご依頼者からすれば、時価総額の大きい不動産をすべて後妻が取得してしまうと、相続分に極端な不均衡が生じます。また、ご依頼者の相手方が、実母ではなく後妻ということもあり、感情的な対立になり話し合いが全く進まないという状況で当事務所へご相談に来られました。

~後妻の主張について~

確かに、後妻の住み慣れた自宅に住み続けたいという希望は理解できます。
しかし、ご依頼者にも法律で定められた法定相続分という権利があります。不動産が遺産の大半を占める本件において、後妻が不動産をすべて相続し、ご依頼者が微々たる金融資産しか受け取れないとなれば、法律が定める公平な分割が実現されません。
このような場合、不動産を取得したい後妻は、ご依頼者に対して持分に応じた現金を支払う代償分割を検討する必要がありますが、支払能力がない場合に独占を主張し続けることは困難となります。

~活動の概要~

当職は、感情的になりがちな後妻に対し、法的な考え方を整理した上で、以下の2つの選択肢を提示しました。
まず、代償分割です。後妻が不動産を単独取得する代わりに、ご依頼者へ適正な評価額に基づいた代償金を支払うこと。そうでなければ、遺産分割調停・審判を経て競売まで進むことも辞さないことを説明しました。
一方、代償金の準備が困難であれば換価分割、すなわち、不動産を共同で売却し、諸経費を差し引いた売却益を法定相続分で分け合うことを提示しました。
どちらを選択するかは後妻の判断に委ねました。

~解決について~

後妻は当初頑なでしたが、弁護士が介入し、もし協議が整わなければ、遺産分割調停・審判に移行したうえで最終的には裁判所の判断で強制的に売却を命じられる可能性があることを理解したようで、態度が軟化しました。
選択肢や不合理な主張をし続けた場合の見通しを丁寧に説明することによって、後妻は、最終的に共同で不動産を売却し、その売却益を分ける提案を受け入れました。

~本件から学べる相続トラブルの解決のコツについて~

本件のように、不動産が遺産の中心であり、かつ、当事者が居住している場合には、法的手続きに則り粛々と進めていった場合には、当事者にとってデメリットでしかない競売による解決となってしまうことを示し、理解してもらうことが重要となります。
当事者同士では、どうせ裁判まではしないだろうと甘く見ていることも多く、弁護士が論理的に法的手段を説明することで、相手方に現実的な妥協を促すことが可能になることも少なくありません。
当事務所は、本件のような不動産が絡む相続紛争や、親族間の複雑な対立案件を数多く取り扱っております。感情的なもつれが深刻化する前に、ぜひお気軽にお問い合わせください。

神津 竜平(こうづ りゅうへい)
【東京法律事務所】
所属弁護士:神津 竜平(こうづ りゅうへい)

プロフィール
國學院大学法学部卒業、明治大学法科大学院修了。弁護士登録後は主に、交通事故、労災事故、相続、中小企業法務(労務問題)を中心に、ベストな解決は如何なるものかを考え抜き、具体的に方針や見通しをお伝えした上で、ベストな解決を追求すべく活動を行う。趣味は旅行、釣り、好きな言葉は「人生一度きり」。

一覧へ戻る

0120-13-4895

お問合せ