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2026年9月号: 危険運転致死傷罪改正について

L+PRESS 2026年9月 PDFで見る

危険運転致死傷罪改正について

1 はじめに

先ごろ、自動車運転死傷処罰法に規定されている危険運転致死傷罪につき、新たな基準や類型の創設を柱とする改正が成立し、令和8年7月21日から施行されています。業務において自動車運転を必要とする会社において重要となる改正であることから、今回はこちらの内容を概観してみましょう。

2 飲酒運転における数値基準の新設

飲酒運転に関しては、「アルコール…の影響により正常な運転が困難な状態」という要件がかねてから定められていましたが、数値基準がなかったため要件の認定が困難であり判断にばらつきが生じるという問題がありました。
改正法では新たに数値基準を設け、呼気中アルコール濃度が0.5mg/L以上の場合で自動車を運転し人を死傷させた場合、一律に危険運転致死傷罪が成立するとしました。また、上記の数値基準を満たさなくても、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であると認定されれば、同様に危険運転致死傷罪が成立するものとされました。「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」といえるかどうかは、事故態様、事故前の飲酒量や酩酊状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒検知結果等を総合的に考慮して判断されます。

3 高速度類型の新設

また新たに「高速度類型」という基準が創設され、最高速度が時速60km以下の場合は時速50km以上の速度超過で、最高速度が時速60kmを超える場合は時速60km以上の速度超過で、それぞれ自動車を運転し人を死傷させた場合、一律に危険運転致死傷罪が成立することとなりました。
加えて、これに準ずる速度であって、道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度であると認定されれば、上記数値基準を満たさなくとも危険運転致死傷罪が成立するものとされました。ここでいう「準ずる」とは数値基準と同程度の速度とされ、少なくとも数値基準を毎時10km以上下回る速度であれば該当しないとされています。また、「道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度」と言えるかどうかは、道路の形状や路面状況、歩行者や他の車両の交通量等に応じて、人の死傷結果が生じるような事故を生じさせないようにすることが著しく困難な高速度をいうとされています。

4 殊更滑走等類型の新設

故意(殊更(ことさら))にタイヤを滑らせまたは浮かせることにより、その進行を制御することが困難な状態にさせて自動車を走行させ人を死傷させた場合に、同様に危険運転致死傷罪が成立するものとされました。

5 おわりに

以上のとおり、危険運転に対してはこれまで以上に厳しい目が向けられることとなります。業務で自動車を使用するにあたっては、こうした運転が絶対に行われないための従業員教育や仕組みづくりが急務といえます。

若松 俊樹(わかまつ としき)
【柏法律事務所】
所属弁護士:若松 俊樹(わかまつ としき)

プロフィール
東京大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了後、弁護士登録以降東京で6年、茨城県水戸市で6年半強ほど一般民事や企業法務などの分野で執務。現在は柏事務所で、交通事故、労災事故、離婚・不貞問題などを中心に活動を行う。趣味は読書や音楽鑑賞、好きな言葉は「鬼手仏心」、「神は細部に宿る」。

交通事故解決事例

1 相談までの経緯

Xさん一家は、家族で自動車に乗車中、ガソリンスタンドから急に飛び出してきた車両に追突される交通事故に遭われました。この事故で同乗していたご家族全員が負傷し、数ヶ月間の通院治療を余儀なくされました。
治療終了後、相手方保険会社から示談金額の提示がありましたが、その内容が果たして適正なのかどうか分からず、将来への不安を抱えられたXさんご夫婦が、当法人にご相談にいらっしゃいました。お話を伺った結果、当法人にてご家族全員の示談交渉をご依頼いただくことになりました。

2 示談金額の提示内容

相手方保険会社から提示された示談金額を確認したところ、ご家族全員の怪我の程度や通院期間を踏まえると、全体的に低額なものでした。特に、同乗していた奥様に対する休業損害(主婦休損)は0円と算定されていたうえ、慰謝料の額も低額にとどまっていました。
Xさんの奥様は主婦として家事や育児の多くを担っていたため、本件の怪我によって家事労働に大きな影響が生じていました。当職としては、ご家族全員の傷害慰謝料の増額を目指すとともに、奥様の主婦休損を適正な基準で請求することを方針として、交渉を開始しました。

3 具体的な活動

まず、奥様の主婦休損について、事故の状況、怪我を負った部位、事故前に行っていた家事や育児の内容、事故によって影響の出た作業、その影響の程度などをヒアリングしました。保険会社は主婦休損を低く見積もる傾向があるため、単に一定額を請求するのではなく、治療経過に応じて徐々に家事への影響が減少していくという「逓減率(ていげんりつ)」を適切に設定しました。これにより、実態に即した論理的で説得力のある計算書を作成し、交渉に臨みました。
また、ご家族全員の傷害慰謝料についても、自賠責基準を確実に上回るように精緻に調整しつつ、いわゆる裁判基準をもとに増額交渉を行いました。この逓減率を適切に設定した現実的なアプローチが功を奏し、相手方保険会社との交渉はスムーズに進展しました。最終的にご家族全体の合計示談金額を、当初の提示額から倍以上に増額することに成功し、無事に和解をまとめることができました。

4 おわりに

ご家族全員が交通事故に遭われるというのは、肉体的にも精神的にも非常に大きな負担となります。とくに、主婦の方の休業損害は、目に見える収入の減少がないため、保険会社から正当に評価されないケースが少なくありません。
今回のように、専門的な視点に基づいた計算や、適切な逓減率の設定を行うことで、スムーズに賠償額が適正化され、納得のいく結果を得られることがあります。相手方保険会社の提案に少しでも疑問や不安を感じたら、一人で抱え込まず、お気軽に当法人までご相談ください。

川原 宏宇紀(かわはら こうき)
【成田法律事務所】
所属弁護士:川原 宏宇紀(かわはら こうき)

プロフィール
中央大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。弁護士登録後は成田法律事務所に所属し、主に、交通事故、労働事件、離婚・不貞問題などの一般民事を中心に、予期せぬ法律トラブルに巻き込まれてお困りになっている方を助け、法的サポートを行うことで、ご依頼者様が理不尽な思いをすることがないよう活動を行う。好きな言葉は「無常迅速」。

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