介護ニュースレター

Vol.4: 身寄りのない方が亡くなった後、その方の財産はどうなるの?

2018年12月 Legal Care News Vol.4 PDFで見る

今回のニュースレターでは、親族と疎遠であったり、やり取りが全くない身寄りのない利用者がお亡くなりになった後に、どのような対処が必要となるかについてご説明します。

ご遺体の引き取りや葬儀

墓地、埋葬等に関する法律では、「死体の埋葬または火葬を行う者がいないとき又は判明しないとき」には、亡くなった方の死亡地の市町村長が遺体を引き取り、火葬・埋葬することとされています。費用は原則として亡くなった方の残した金品で当てますが、足りない場合は市町村の負担となります(同法第9条)。
後見人や死後事務受任者が埋葬・火葬、遺体の引き取り等を行うこともあります。

身寄りのない方の財産の行き先は?

法的には相続人の所有物となり、相続人が引き継ぐこととなりますが、相続人が分からない場面も多いかと思います。
施設で身寄りのないままお亡くなりになった場合、施設運営者が、利用者の戸籍調査・相続人の住所調査を行うことは限界があるかと思います。
施設の場合、あらかじめの入所契約の際、遺留品の扱いをどうするか(身元引受人にお渡しするか、処分の可否)を決めておく必要があるでしょうか。

成年後見人の業務の範囲は?

ご本人の死亡により、成年後見人は法定代理人の立場を失います。死後事務について、成年後見人は代理権がありません。(任意後見人かつ死後事務受任者であれば、代理権があることもあります)
そのため、成年後見人の死後事務については、過度な期待は禁物です。

高額な金品や不動産はどうなるか?

身寄りがなく亡くなった方(被相続人)に遺言があるかどうか、相続人(一般的には、配偶者、子ですが、兄弟姉妹や甥姪が相続人となることもあります)がいるかどうかによって大きく扱いが異なります。

遺言がある場合は、遺言で財産を譲り受ける人物(受遺者)や、その関係者が遺言執行者となっていることが多く、遺言執行者によって遺言内容に従った財産の承継がなされます。
遺言によって遺留分(配偶者や直系尊属卑属にのみある権利。法定相続分の半分が基本)が侵害された相続人がいる場合、遺留分減殺請求権の問題となります。

遺言がなく、かつ、相続人がいる場合、相続人の確定順序に従い、基本的には、法定相続分に従って遺産が承継されます。
遺言がなく、かつ、相続人がいない場合、「相続財産管理人」の選任手続きとなります。
相続財産管理人の業務の詳細は省略しますが、概要としては、被相続人の負債・財産の調査、負債の支払い、財産の現金化、特別な人的な関係があった特別縁故者への財産交付などを主要業務としています。
私も何度か相続財産管理人業務の経験がありますが、当該業務については、被相続人の財産の清算業務の面が強いといえます。
また、帰属者がいない財産については、最終的には、国に帰属します。

まとめ

  • ・亡くなった場所が自宅か施設か
  • ・親族と連絡がとれるかとれないか
  • ・どこのお墓に入るか
  • ・遺産額が大きいか少ないか
  • ・遺言を残しているかどうか
  • ・手続きを主体的に進めてくれる人物がいるかどうか

などにより、様々なパターンがあり、身寄りのない方が亡くなった場合は、それぞれの手続きを解きほぐして対処する必要があります。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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