介護ニュースレター

Vol.6: 労働基準法違反による外国人技能実習認定の取消しについて

2019年2月 Legal Care News Vol.6 PDFで見る

今回のニュースレターでは、労働基準法違反による外国人技能実習認定の取消しについてご説明します。

計画認定取り消しの処分

1月下旬、法務省と厚生労働省は、大手自動車メーカー、大手電気メーカー4社に対して、外国人技能実習生に対して実習計画を逸脱した作業をさせたり、従業員に違法な長時間労働をさせたなどとして、実習生計100人以上の計画認定を取り消しました。
報道によれば、この取消しによって、各社は5年間、実習生の新規受け入れができなくなり、また、4月施行の改正出入国管理法で創設される新在留資格「特定技能」の外国人労働者の受け入れもできなくなる見込みとのことです。
また報道によれば、法務省の調査によって、自動車メーカーでは同様の不正は実習生の受け入れを始めた2008年から始まり、国の調査が入った昨年5月まで続いていたとのこと。大手電機メーカーでは、月最長100時間超の違法な残業をさせており、昨年3月、労働基準法違反の罪で法人に対する罰金刑が確定し、労働関係法令に違反した企業は実習ができなくなり、同社の実習生が取り消されています。

法務省の見解

法務省では、過去5年間に技能実習法や労働関係法令に違反した場合は受け入れを認めないという方針も採用しています。
外国人技能実習生の受け入れを考えている介護施設や介護事業所にとっては、法令違反は特に気をつけねばなりません。

弁護士の見解

今回の厳しい処分は、「実習生に違法な労務をさせれば、それは外国人実習生の受け入れができなくなるぞ!」という政府から企業への強いメッセージです。長時間労働を典型として、この「労働基準法違反」というものは、非常に適用される場面が多いといえます。
弁護士として様々な労務問題に取り組んでいますと、【違法な労働によって労働基準法違反の罪で罰金刑に処せられる】⇒【実習生の受け入れが困難】⇒【ますます人手不足になる】という労務問題の連鎖発生を強く意識します。
労働者の権利意識の高まりや情報取得の容易さもあり、労働基準監督署への申告は誰でも簡単に行える時代です。
日本人のみならず、外国人の実習生に対しても、コンプライアンスをふまえた労働環境の整備を行わないと、このような行政処分を受け、結果として人材確保に窮する事態にもなりかねません。外国人実習生の受け入れに際しては、コンプライアンスを意識した労働環境の整備が不可欠といえます。

外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律

(認定の欠格事由)
第十条 次の各号のいずれかに該当する者は、第八条第一項の認定を受けることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
この法律の規定その他出入国若しくは労働に関する法律の規定(第四号に規定する規定を除く。)であって政令で定めるもの又はこれらの規定に基づく命令の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
(略)
六 第十六条第一項の規定により実習認定を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者
(略)
第八条第一項の認定の申請の日前五年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者

(認定の取消し等)
第十六条 主務大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、実習認定を取り消すことができる。
実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていないと認めるとき
二 認定計画が第九条各号のいずれかに適合しなくなったと認めるとき
三 実習実施者が第十条各号のいずれかに該当することとなったとき
(略)
出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき
2 主務大臣は、前項の規定による実習認定の取消しをした場合には、その旨を公示しなければならない。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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