介護ニュースレター

Vol.15: 厳しい自治体担当者への対応について

2020年11月 Legal Care News Vol.15 PDFで見る

実地指導では、自治体の介護保険課などの担当者(以下、「自治体担当者」)が事業所を訪れ、適正なケアマネジメントの実施やコンプライアンス(法令遵守)にのっとった事業が行われているかを確認します。
もちろん、介護事業所の運営にあたって報酬の不正請求などが許されるものではありません。実地指導に対して書類の不提出や虚偽の報告、検査の妨害などをすれば、監査手続きが始まり、指定取り消しなどの厳しい処分が下されてしまうこともあります。
しかしながら、弁護士として介護事業者のご相談をお受けしていると、自治体担当者による度を過ぎた発言、名誉毀損や侮辱にもあたりうるような発言が散見されます。
自治体担当者が不正の発見や追及に熱心なあまり、過剰な発言をしてしまうことがあるようです。
そこで、本ニュースレターでは、厳しい自治体担当者にあたってしまった場合の対応について、ポイントをお伝えします。

①指導内容は、法令・厚生労働省通知や実地指導マニュアルに基づくものか?

これらの根拠がある場合に指導を受けるべきことは当然ですが、時には、自治体担当者がこれらの内容を十分に理解していない場合や誤解をしている場合があります。
また、これらに明記されていない事項(例:人員基準のカウント方法)や解釈に争いがある事項について、自治体担当者が一方的に決めつけをして指導を行っていることがあります。
そのため、実地指導時の自治体担当者の発言や内容に疑問を感じたら、「法令の根拠や厚労省の通知を示していただけますか?」「今のご指摘は実地指導マニュアルのどちらに書かれていますか?」など、こちらから質問をし、牽制することも重要です。

②先方の発言内容について記録を残し、書面化する。

実地指導にあたって、どの程度厳しい発言がされるかは自治体担当者の個性やタイプによって様々です。時には、名誉毀損・侮辱にも該当しうるような発言や人格非難のような発言を自治体担当者が行ってしまうことも懸念されます。
発した言葉を引っ込めさせたり謝罪をさせることは困難ですが、このような発言を真面目に受け止めていると、ストレスが増大し、指導に素直に従うことも難しくなります。
自治体担当者の発言については必ずメモなどを残し、行き過ぎた発言があったような場合は、下記のように必ず記録を残しましょう。

・〇月〇日、〇時〇分、〇〇氏から当事業所〇〇に対する発言 「~~~」
・〇月〇日、〇時〇分、〇〇氏から当事業所〇〇に対する発言 「~~~」

なお、実地指導時に無断で録音を行うことは、実地指導に非協力の事情となりうるため、弁護士としてお勧めはできません。

③疑問は書面で送付

①で示したような、法令・通達・マニュアル等に明記されていない実地指導内容については、なぜそのような指導を受けなくてはならないのか、事業所として何を改善すれば良いのか、といったテーマが自治体担当者によってブレることがあります。
このような場合、口頭での議論は水掛け論になってしまいがちです。
そこで、自治体担当者に宛てて疑問は文書で発送しましょう。
文面例は「〇月〇日の実地指導において、~~といった指導を受けましたが、そのような指導に関して法令・通達・実地指導マニュアルの根拠をお示しいただけますでしょうか? 当方でも調査をしましたが、残念ながら指導根拠が見当たりませんでした。誠にお手数をおかけしますが、〇月〇日までに書面にて指導根拠を当方にご教示いただきますよう、お願いします。」などになります。
実地指導に慣れない介護事業者にとって、自治体担当者とのやり取りは非常にストレスがかかります。今回ご紹介した方法を駆使して、自治体担当者とのやり取りを少しでもストレスの少ないものにしてもらえればと思います。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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