介護ニュースレター

VOL.16号:利用者・家族からの暴言への対応について

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介護事業の現場では、利用者や家族等による暴言が度々発生します。
「大声を出す」、「怒鳴る」、「職員に威圧的な態度で文句を言い続ける」、などの暴言です。
暴言は法的には、介護事業者・職員への権利侵害といえます。
介護事業者・職員の身を守り、安心して働くことのできる環境のためには、暴言への対応 は不可欠です。
そこで、本ニュースレターでは、利用者・家族からの暴言への対応について、法的な視点 からポイントをお伝えします。

暴言を起こす利用者や家族のカテゴリー

大きく3つのカテゴリーに分けられます。

1.暴力的な利用者・家族

①反社会的勢力(現元暴力団など)の利用者・家族、②薬物依存・アルコール依存症、③精神障害や重度の精神疾患者の利用者・家族などが挙げられます。
暴言に止まらず悪質な犯罪行為などによって警察問題になることも多い類型です。
接遇の工夫では対処は基本的に不可能であり、対応ルールの構築が必要であり、また、警察、行政機関、専門家の関与・代理が不可欠です。

2.困った利用者・家族

傷害事件や器物損壊など警察沙汰は基本的に起こさず、とにかく自己中心的な態度での迷惑行為を執拗かつ巧妙にかける層です。人格障害や一定程度の精神疾患者も多いカテゴリーです。接遇で対処できないことも多く、専門家の助言・関与・代理が必要になることも多いと言えます。

3.普通の利用者・家族

「利用者・家族」としての権利意識が高く、様々なサービスを要求する層です。接遇で対処できることが多いといえますが、エスカレートすると激しい暴言をしたり、クレーマーになったりします。

暴言の対応方法

1.時間を区切る

先方の発言を聞く時間を限定し、エスカレートを防止します。特に電話などで暴言が始まった場合に有効です。「~~分から~~の件で会議があるので、あと○分程度しか聞けません」など、予め話を聞ける時間を告げ、長時間の暴言を回避します。

2.人を変える・複数人で対処する

利用者や家族によっては、大人しかったり、言われるがままの職員に対しては暴言を行い、他の職員には暴言を行わないと態度を変える人物もいます。
そのような人物は、心理的優位性がある相手に限定して暴言を行っていることもあります。そのため、暴言にしっかりと反論ができる責任者や体躯のしっかりしている男性など「暴言を行う人物にプレッシャーをかけられる人物」や複数人で対処することが有効です。

3.場所を変える

事業所外の会議室や周囲に人がいるカフェなどに場所を変えることも有効です。
会議室などを使用する場合は 長期居の居座りにならないよう注意が必要ですし、また、密室の場合、暴力行為へエスカレートする事態に備えて、出口から近い場所にこちらが座る、逃げやすい配置にするなどの工夫も必要です。

4.録音をする旨を伝える

会話を録音する旨を告知し、暴言を抑制する方法も有効です。「後から何を言った、言わないと水掛け論になることを避けるため、会話の録音・記録を取ります。同意されない場合、話をお伺い できません。」といった伝え方になります。

脅迫には注意を

「〇〇しなければ、お前の家族がどういう目に遭うかわかっているだろうな」などの脅迫行為については、ステージを分けた対処が必要です。暴言と脅しはリスクが全く違います。
特に、精神障害や認知症といった判断能力に問題がない利用者や家族からの脅迫行為は犯罪として成立することも多いといえます。NG対応は、脅しに屈しない態度をとることです。加害者が逆上し、暴力傷害の被害可能性が高まります。
脅迫行為が始まった場合、①「失礼します」と言い一刻も早く離れて逃げる、②ケアや接遇の即時中止、③ 警察への通報、④継続対応時は安全を確保の上で進める、などの対処が必要です。

【弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属】
介護法務研究会(C-LA)代表 谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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