介護ニュースレター

VOL.19号:問題行為が続く利用者や利用者家族との契約解除

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介護事業の現場では、利用者や家族からの度重なるクレーム、ハラスメント、サービス外の様々な要求、ルールを守らない迷惑行為などに困る場面が発生します。
問題行為の絶えない利用者や利用者家族に対して、どのような場合に契約解除を行えるか、そのポイントを解説します。

契約解除の検討場面
「利用者や家族からの問題行為」

  • ・ケアプランに含まれないサービスについて、利用者や家族から要求されている
  • ・サービスの内容について、過剰な要求がされている
  • ・事業者に落ち度がないのに、頻繁にクレームを受ける
  • ・ちょっとしたミスで長時間にわたる過大な叱責を受ける
  • ・全く話し合いができない
  • ・利用者の家族から暴言、恫喝を受ける
  • ・利用者の家族から暴力を振るわれて怪我を負ってしまった
  • ・担当職員が精神的に追い込まれている

悪質なクレームや利用者・家族による問題行為が続けば、事業者の管理者や職員が「これ以上サービスを提供できない」と精神的に追い詰めら れてしまいます。
このような状況においては、事業者からの契約解除も検討することになります。

介護サービス利用契約の特殊性

介護保険法の下でも、実際の介護サービス提供に関して生じた問題については、事業者と利用者との間の法的関係になり「私法上のサービス利用契約(役務提供契約)関係」の問題として検討することになります。

介護サービスの利用契約(委任契約)の特性は、 ①最善のケアを提供する義務、②特別な法的関係に基づいた保護義務(利用者に対する注意義務・忠実義務)、③利用者の協力義務(受任者に対する経済的損失を与えない義務、誠実に対応する義務)が挙げられます。
介護サービス契約は利用者の「生活基盤」に直結するものであり、契約解除の事態はその生活基盤を大きく揺るがすものです。そのため、軽い契約違反のみでは、事業者側からの解除は容易でありません。裁判例でも、事業者からの安易な解除が認められなかったものが散見されます。
もっとも、③にあるように、利用者・家族には事業者の提供する介護サービスに誠実に協力する義務があります。利用者や家族による問題行為が、契約の解除を正当化できる「背信的行為」にあたるか否かが特に重要となります。

契約解除の有効性が肯定された裁判例
(東京地方裁判所 平成29年6月23日判決)

利用者の介護を行うことなく放置したとして、利用者の子が事業者に対して損害賠償を求めた事案です。判決では、利用者のケアプランの範囲外の食事介助をしていたヘルパーが退職し,現状のケアプランのままでは食事介助ができないことを利用者の子に伝えたところ、子があくまで食事介助をするよう求めたとし、事業者は契約上の義務をすべて履行していることを認め、子の請求を棄却しています。

契約解除の有効性が否定された裁判例
(東京地方裁判所判決 平成21年8月28日判決)

身体障害者居宅介護契約に関して、事業者側の一方的な契約解除とサービス提供の打ち切りについて、利用者が事業者に損害賠償を求めた事案です。判決では、正当な理由なく利用者に対する介護サービスの提供を打ち切って必要な措置を取らなかったとして、事業者側の債務不履行を認め、利用者が受けた一部の損害賠償を認められています。

【弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属】
介護法務研究会(C-LA)代表 谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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