介護ニュースレター

Vol.20: 利用料などの滞納や未払い問題への対処1「連帯保証契約の活用」

2022年2月 Legal Care News Vol.20 PDFで見る

介護事業所からのご相談として、「利用者が利用料金を支払わない」「利用者の口座引落しとされている利用料や管理費の引き落としができず、未払いとなっている」といったものがあります。

未払いが想定されるものとしては、
①退去時の居室の原状回復費や管理費、食費、介護保険サービス費等の未払い
②利用者の故意過失で建物や居室に損害や汚染が生じた場合
③施設や職員に損害を与えてしまった
などです。

介護保険による給付があるため、本人負担額について取立てのノウハウがなかったり、保険外サービスの未払いが多数あり、滞納額や未払い額が数十万円になってしまうこともあり、福祉を扱う介護事業者としては、厳しい取り立てをすべきか悩んでしまい、結果として未収金として計上されるケースも多いかと思います。

利用者やご家族のため、利用者に適切な介護サービスを提供したにも関わらず、滞納問題が生じ、その解決ができない状態が続いてしまうと、事業所の売上低減や職員の労働意欲の低下などデメリットが多数あります。

そこで、利用料の滞納や未払い問題に対する法的対処法を数回にわたって解説することとし、初回は「連帯保証契約」についてお伝えします。

1.家族には利用料を支払う法的な義務はない

介護契約は、利用者と介護事業者との契約のため、利用料を滞納した場合に請求できる相手は利用者本人が基本です。
これは、入所契約書や身元引受人などにキーパーソンのご家族がサインしていても同じです。利用者が利用料を滞納している場合でも、その家族は当然に滞納額を支払う義務があるわけではありません。

「利用者の利用料の滞納分を、代わりに払ってくれませんか。」と家族にお願いはできますが、家族に断られてしまった場合、法的に家族は滞納額の支払い義務が当然にあるものではありません。

2.連帯保証の重要性

連帯保証とは、債務者(利用者)のみならず、その保証人となった方(家族)にも法的に滞納額の請求を可能とする契約となります。

連帯保証人は、本来の債務者と同じ責任を負う立場になります。連帯保証人はご家族以外でもなることができます。

入所契約書などに連帯保証人の規定と署名欄を設けておくことが重要です。

民法改正により2020年4月1日以降の契約では、個人の連帯保証契約に際しては極度額を定める必要があります。極度額とは、連帯保証人の負担額の上限の規定です。

「連帯保証人は、〇〇(介護事業者)に対し、利用者が本契約上負担する一切の債務を連帯保証するものとし、その極度額は200万円の範囲内とする。」といった規定です。

極度額の金額については、法律に規制はありませんが、高額すぎると連帯保証人になろうとした方が協力しない事態が起きたり、法律的に保証契約が無効となるリスクがあります。

想定される利用料の未払いの事態や賠償保険では対応できない利用者により賠償が発生する事態などを想定した上で極度額を定める必要がありますが、居宅系介護サービスでは50万円程度、施設系サービスについては100万円~200万円程度が目安となると考えます。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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