介護ニュースレター

Vol.24: 介護事業所での問題職員への対処方法

2023年2月 Legal Care News Vol.24 PDFで見る

弁護士として、様々な介護事業所から問題職員への対処方法のご相談を頻繁にお受けしますので、改めて本ニュースレターで解説いたします。

問題職員のタイプとその影響

問題職員のタイプは大きく下記に分けられます。

1 問題職員のタイプ

(1)組織の秩序を壊す職員

  • ・管理職や同僚に乱暴な言葉を吐いたり、乱雑な行動を起こす
  • ・業務指示を拒否する
  • ・周囲との人間関係トラブルを次々に起こす
  • ・他の職員にいじめやハラスメントをする

(2)雇用継続が難しい職員

  • ・簡易な業務や基本的な業務でのミスを多発する
  • ・業務の改善ができず、改善する意欲もない
  • ・休職や体調不良による欠勤、遅刻、早退を繰り返

2 問題職員による影響

(1)周囲の職員や現場規律、利用者への影響

このような職員の行動を放置していると、問題職員に影響されて管理職の指示に従わない職員が増える、過度な権利主張をする、不当な要求をする、現場に管理職のことを馬鹿にする風潮が広がり職場の規律が欠如する、頻発するトラブルに嫌気がさした職員の離職が続く、利用者からのクレームが増え、契約の解除が増える、といった悪循環になってしまいます。
問題職員の対応には現場に多くの労力を取られ、また、退職者が増えるなど、事業所に重大な悪影響を与える存在です。

(2)管理職への逆パワハラ問題

職員が管理職の業務指示に強く反発したり、「パワハラだ」などと主張して従わない、反抗的な態度や暴言が横行するといった事態は、問題職員から管理職への「逆パワハラ問題」として被害者である管理職に様々な影響(心身の不調、業務実績の低下、時には離職など)を招き、事業所全体に深刻な問題を招きます。
このような逆パワハラ問題については、適正な対処が不可欠です。

(3)懲戒処分の運用への影響

懲戒処分は、介護事業所が問題職員に対応する有効な手段の一つですが、職員の問題行動を見逃したり、管理職が長期間目を背け続けた後に問題職員に対して懲戒処分を行うと、過去の介護事業所の対応とのバランスを考慮され、懲戒処分が訴訟などで無効となってしまうリスクもあります。

問題職員への具体的な対処方法

(1)問題行動発生時は迅速な口頭や文書での指導

問題行動が発生する度に繰り返し指導をすることが重要です。
指導時には手短に正確に問題点を指摘します。
また、「どのようにすべきか」という問題点に応じた具体的な対処・改善方法を正確に伝えることが必要です。「それぐらい」「誰でもできる」「なにもわかっていない」など、感情を害するような言葉使いや表現は避けましょう。

(2)定期的な面談

定期的な面談を実施し、管理職から業務の改善事項などを伝えます。
問題職員に問題行動が許されない、というプレッシャーをかける効果もあります。

(3)改善については書面で求める

業務改善報告や反省文などを書面で求めることが重要です。
自らの問題行動を振り返り、また、改善姿勢が足りない場合は厳しい指導に繋げることも可能です。

(4)人事異動や配置転換

問題職員に対しては、管理能力や指導力の高い管理職の下におくことが考えられます。
周囲の職員への悪影響を解消させる効果もあります。
業務上の必要性がない人事異動や退職に追い込むための人事異動は違法となるので、注意が必要です。

(5)懲戒処分

指導や面談を行ったり、人事異動によって担当業務が変わっても問題行動が改善されないときは、懲戒処分を進めることになります。
懲戒処分を行うことで本人に制裁を与え、同時に、他の職員に対しても規律違反行為や問題行動を許さない、という介護事業所の姿勢を明確にできます。一般的な懲戒処分には、「戒告・譴責・訓告」、「減給」、「出勤停止」、「降格」、「諭旨解雇」「懲戒解雇」があり、問題行動の程度や頻度により、適切な懲戒処分を進めることが重要です。

まとめ

問題職員が発生する職場では、労務管理について違法な対応やルールの不整備、管理側の指導力不足といった原因も多く見られます。そのため、介護事業所側の原因をしっかりと検討せず、特定の職員を一方的に問題職員と決めつけることは避けるべきです。
また、労務関係の法律やハラスメント問題を勉強している職員は、違法な事業所の労務対応について強く反発します。
問題職員に対して、労務管理能力が低いままに対応しようとすると、パワハラと指摘を受けたり、外部の労働組合の介入を招いたり、安易な解雇で解雇無効訴訟に発展したりと問題が拡大してしまうリスクもあります。事業所での対応が難しいと思われるときは、問題をこじらせる前に、弁護士へのご相談をお勧めします。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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