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2020.12月号:業務委託契約締結にあたっての注意

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業務委託契約締結にあたっての注意

弁護士業務として、契約書チェックのご依頼を受け、様々な業務委託契約書を確認していますと、取引先の用意した契約書がクライアント様に不利益な内容となっている場面によく遭遇します。
そのため、業務委託契約を締結する際の特に重要なチェックポイントや契約内容の調整方法をお伝えします。

一 契約書の重要チェックポイント

1 委託業務が具体的に特定されているか

委託業務の内容が抽象的であったり、特定されていないと、当事者に業務範囲の認識の違いが生じてしまいます。
発注側は「ここまで業務として引き受けて欲しい」「この内容は委託内容に含まれるはずだ」と考え、受託側は「これは業務の範囲に含まれていない」「ここまでは対応しきれない」などと考えてしまい、認識のズレが生じてしまいます。

2 検収・瑕疵担保責任

契約書にできるだけ詳細な内容を定めることが望ましいといえます。

3 成果物の著作権などの知的財産権

コンサルティング契約や共同制作物がある場合、調整が不可欠です。著作権は委託者に譲渡されることが多いといえますが、受託者へ使用許諾などをどう考えるかも重要です。

4 契約の有効期間、更新や解約申し入れタイミング

契約の自動更新条項がある場合、解約申し入れ期限が契約終了の3か月前などになっていないか、注意が必要です。もし解約をする場合の解約申し入れのタイミングや更新期間などは双方で認識共有が必須です。

5 損害賠償の内容や範囲

契約違反や損害が発生した場合、委託側は損害の賠償を求め、受託側はできるだけ賠償責任を回避し、また、その範囲を制限したいと考えます。
故意重過失に限定するか広く過失がある場面を含むか、損害賠償範囲を委託料の範囲で制限するかしないかなど、双方の思惑が絡むところですが契約締結前に調整は必須です。

二 契約内容の調整方法

契約書の条項調整は双方が希望する条項を提示し合うことが基本ですが、こちら側に有利な条項を一方的に提示すると、取引先との関係がギクシャクしてしまうことがあります。
まずは、関係者の話し合いで双方の認識や希望のすり合わせを行い、契約書への条項反映をスムーズに進めることが基本です。
取引先の担当者から「契約書自体は会社の定型のもので、条項変更は禁止されている。」などと伝えられることがあるかと思います。
そのような場合、契約書とは別に『覚書』を締結することが基本です。覚書の作成方法は法的な決まりはありませんが、「変更前の契約書の特定情報」「契約書の変更箇所」「覚書の効力発生日」「双方の記名押印」などの項目は必須となります。
覚書の締結も難しい場合、契約書以外での調整や合意事項について、メールのやり取りを必ず残すなど、後日のトラブルに備える必要があります。

【東京法律事務所】
代表弁護士:谷 靖介(たに やすゆき)
プロフィール
東京弁護士会所属。明治大学法学部卒業後、2002年(旧)司法試験合格。2004年弁護士登録(司法修習57期)。リーガルプラスの代表として複数の法律事務所を経営しつつ、弁護士としては主に中小企業の法務労働問題、相続紛争業務を担当する。千葉県経営者協会労働法フォーラム、弁護士ドットコム(法律事務所運営)などの講師を務める。また、NHK、テレビ朝日、FLASH等のメディア取材や日経ヘルスケア、医療介護専門誌への寄稿も多数。趣味は読書、旅行。

交通事故解決事例Q&A

事例
青信号を歩いて渡っていたところ,前方不注意の右折車にひかれたAさんは,病院で肩の腱板損傷などと診断されました。
1年近く一生懸命治療をした結果,幸いにして痛みが残ったりすることもなく治ったのですが,保険会社から提示された賠償金額案を確認したところ,わずか40万円程度に過ぎない額を提示されました。そこでAさんは,納得できないと私にご相談にいらっしゃいました。
私がAさんに対する保険会社の提案額を確認したところ,特に慰謝料の額が「裁判基準」に比べて極めて低額な算定であることがわかり,その部分に集中して交渉を行うこととしました。

慰謝料の「裁判基準」(あるいは「弁護士基準」)といわれる基準とは何なのですか。

事故によってケガを負わされること自体,人にとっては精神的に苦痛なことですが,こうした精神的苦痛を,せめてものお金で埋め合わせようというのが慰謝料です。
しかし,人によって苦痛の感じ方は違いますから,これを具体的な金額にするのはなかなか簡単なことではありません。そこで,賠償実務では今までの多くの事故の事例の積み重ねから,治療期間(事故から治癒又は症状固定までの期間)の長さをもって精神的苦痛の大きさと仮定し,それに対応して相当の慰謝料を決めることとされました。
これが,「裁判基準」とか「弁護士基準」と呼ばれるもので,民事裁判で裁判官が判決を下す際はこれに則る実務となっています。
一方で,保険会社は「保険会社基準」と称して,独自の内部基準に基づいて賠償額の提案してきますが,一般的に裁判基準よりも低額です。そこで,交通事故の被害者に弁護士がついた場合,被害者側弁護士は安い「保険会社基準」の算定に反論し,「裁判基準」での支払いをするように求めます。
本件でも,私は「裁判基準」の慰謝料を示し,これに基づく賠償金を支払うよう交渉をスタートしました。

「裁判基準」などと呼ばれる基準にも2種類あるのですか

実は「裁判基準」にも,「表1」と「表2」の2種類の基準があり,「表1」の方が高額となっています。原則は「表1」を使うのですが,むち打ち・打撲などの軽傷のみの場合は,低額な「表2」を使うこととなっています。
本件では,私どもが原則通り「表1」の金額を主張したところ,保険会社はむち打ちなどで使われる「表2」基準を元に,さらにそこから割引をした金額で再提示してきました。
これに対して,当方から粘り強く「原則は『表1』を使うべきであり,『表2』が使われるのは,「むち打ち」「打撲」だけといった,特に症状が軽度な場合に限られること」「本件では腱板損傷が発生したのであって,『表2』を使う理由がないこと」を訴えたところ,最終的には保険会社が譲歩し,「表1」基準に基づいて100万円以上の増額に成功しました。

【市川法律事務所】
所属弁護士:小林 貴行(こばやし たかゆき)
プロフィール
早稲田大学政治経済学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、中小企業法務(労務問題)を中心として、「最後の解決の時まで、事件の状況の変化に従ってあるべき道すじを考え続け、お示しする」気持ちを大切に、活動を行う。

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