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2021.7月号:テレワークにおける労務管理のポイントについて

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テレワークにおける労務管理のポイントについて

コロナ禍を受け、2020年から今年にかけて、多くの企業で急速にテレワークが普及しました。このような社会情勢の中、今回はテレワークにおける労務管理のポイントを解説します。

テレワークと労働基準関係法令(例:労働基準法、労働契約法など)の関係性はどのようになっていますか?

テレワークを行う場合でも、労働者には、当然に労働基準関係法令が適用されます。使用者の指揮命令の下で業務を遂行することに変わりはなく、テレワークが労務提供の一形態であることには変わりはないからです。
そのため、労働協約や就業規則の変更、個別労使合意にて、テレワークの対象労働者や実施条件(就業場所、労働時間、通信費、セキュリティ関連など)を定める必要があります。

テレワークの労働時間の管理にあたり、どのような点に注意すべきですか?

テレワークでも、通常勤務と同様に休憩を与える必要があります。一斉付与ではなく随時休憩を可能にするなどの工夫も考えられます。また、時間外・休日労働についても、通常勤務と同様、三六協定の締結と届け出が必要になります。
そして、時間外や休日労働を行う場合は、事前許可性や届け出を必要とすることや、業務時間外に会社システムへのアクセス制限をかけるなど、長時間労働の防止に配慮した労務管理体制の構築が望まれます。

労働者が自宅でテレワークする際、企業が気を付けるべき環境整備として参考になるものはありますか?

2018(令和元)年9月6日に一部改正された「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」において、「テレワークを行う作業場が、自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)、労働安全衛生規則及び「情報機器作業における労働衛生のためのガイドライン」(2018(令和元)年7月12日基発0712第3号)の衛生基準と同等の作業環境となるよう、テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい」とされています。
これらガイドラインを参考として、厚生労働省のサイトには、自宅でテレワークを行う際の環境整備ポイント(空間、温度、部屋の照度、ディスプレイ照度、机やイスの高さなど)がまとめられています。

テレワークでもパワハラやセクハラの防止には注意が必要ですか?

テレワークが普及するに伴い、テレワークでは出社時と異なる下記のようなハラスメントが問題視されています。
①監視(在宅の業務状況の報告を過度に細かく要請する、常にオンラインで業務状況をチェックする)
② 叱責(多くの出席者がいるオンライン会議で執拗に叱責)
③ 過度な負担(とても納期までに終わらないような膨大な作業を任せる)
④ 個の侵害(体形の変化や身だしなみ、服装への批評、業務時間外のオンライン飲み会の参加強要など。セクハラにも該当しやすい)
これらハラスメント行為が行われないよう、研修・ルールの整備と合わせ、従業員への啓蒙・教育は不可欠です。

【東京法律事務所】
代表弁護士:谷 靖介(たに やすゆき)
プロフィール
東京弁護士会所属。明治大学法学部卒業後、2002年(旧)司法試験合格。2004年弁護士登録(司法修習57期)。リーガルプラスの代表として複数の法律事務所を経営しつつ、弁護士としては主に中小企業の法務労働問題、相続紛争業務を担当する。千葉県経営者協会労働法フォーラム、弁護士ドットコム(法律事務所運営)などの講師を務める。また、日本経済新聞、NHK、テレビ朝日等のメディア取材や日経ヘルスケア、医療介護専門誌への寄稿も多数。趣味は読書、旅行。

賃料が度々遅れる賃借人に、円満に退去してもらうことに成功した事例

ご相談内容

ご依頼者様は、ご自身でアパート物件を所有し賃貸に出されている方でした。ご相談内容は、「賃借人の中に度々賃料が遅れる人がいる。時には数ヶ月遅れてから、保証人に請求してようやく振り込まれたというときもあった。電話などをしてもなかなか連絡がつかないことが多く、できれば出て行っていただきたい」というものでした。

賃料支払いが遅れたら、すぐに賃借人を退去させられますか

賃貸借契約書にこうした文言が盛り込まれていることも多く、「賃借人も納得して契約した以上は賃料を払わなかったらすぐに退去させられるはず」という考えもあり得そうなところです。
しかし、住居は生活の基盤であることから、借地借家法などの法律で賃借人は強く保護されています。こうした点に鑑み、最高裁は「相互の信頼関係を破壊するに至る程度の不誠意」がないと賃借人を退去させることができない趣旨の判決を出しています。
貸している側からすれば、少しでも賃料が遅れたら信頼関係は破壊されたようなものといえます。しかし、信頼関係の破壊は客観的に明らかなレベルに達していなければならないとされており、実務的には3ヶ月分程度の滞納がないと強制的に退去させることは困難です。
本件では、ご相談時には過去の滞納分の賃料は既に弁済されており、直近ではたびたび遅れているといっても数日程度の遅れにとどまっていたため、法的手段によって退去させることは難しい状況でした。
そこで、今後の確実な支払いを誓約させることを現実的な目標としつつ、話し合いの中でうまくいけば自主的に退去させるという方針をご依頼者様に説明し、ご了承を得ました。

事件の進行と顛末

弁護士として相手方と直接お話し合いをしてみると、相手方は賃料がたびたび遅れてしまう自らの非を認め、退去してより賃料の安い物件へ転居する意向を示しました。そこで、「①賃貸借契約の合意による終了②引っ越しに向けた猶予期間を設定し、その間のみ一時使用を認める」という内容の、退去に向けた覚書を作成しました。
覚書で設定された猶予期間の間に、相手方は親族の援助のもとで新しい住居を契約し引っ越しを完了。円満に事件が終了しました。

弁護士に頼めば、今回のように必ず賃借人を退去させられますか

自主的な退去は、あくまで賃借人自身の自主的な判断です。前記の通り、そもそも法律上退去させられない可能性もありますし、退去させられるとしても賃借人が粘った場合などには退去の実現まで相当の期間や費用を要することが多いです。
賃借人とのトラブル事例においては、法律上の限界や、課題実現に必要となる費用や期間の認識を適切に共有し、事件の現実的な着地点の設定や、そこに向けてのスケジュールや費用のプランニングをご相談段階から弁護士とよく打ち合わせることが肝心です。

【市川法律事務所】
所属弁護士:小林 貴行(こばやし たかゆき)
プロフィール
早稲田大学政治経済学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、中小企業法務(労務問題)を中心として、「最後の解決の時まで、事件の状況の変化に従ってあるべき道すじを考え続け、お示しする」気持ちを大切に、活動を行う。

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