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2021.9月号:2021年民法改正で大きな意味を持つ「相続開始から10年」

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2021年民法改正で大きな意味を持つ「相続開始から10年」

昨年4月1日、民法のうちの債権に関する大規模な改正法が施行されたばかりですが、今年の春にも民法の改正法が成立し、4月28日に公布されました。施行は一部例外を除いて公布の日から2年以内となります。
相続土地国家帰属制度など重要な改正がいくつかあるのですが、今回の改正によって「相続開始から10年」という期間が様々な面で重要な意味を持つようになりました。
そこで、今回の民法改正で「相続開始から10年」が持つ意味について解説したいと思います。

1.遺産分割で特別受益、寄与分の主張ができなくなる

まず、相続開始から10年を経過した後に行う遺産分割の場合は、特別受益や寄与分の主張ができなくなります。つまり、遺産の前渡しや被相続人への寄与が遺産分割手続で一切考慮されなくなります。これを防ぐためには、相続開始から10年以内に遺産分割調停または審判の申立てをしなくてはなりません。個人的には、今回の改正の中でもっともインパクトの大きい内容の一つであると思います。

2.遺産分割調停・審判の取下げに相手方の同意が必要になる

2との兼ね合いで、相続開始から10年を経過した後で遺産分割調停・審判の申し立てを取り下げるには、相手方の同意が必要とされることとなります。

3.遺産分割禁止の期間は10年が上限となる

遺産分割禁止の合意や審判の規定について、最初は5年まで、その後延長しても相続開始から10年が上限とされることになりました。

4.共有物分割訴訟の中で遺産共有状態にある部分の分割もできる

共有物の全部または一部が相続財産で、それについて遺産分割手続をすべきときは、当該部分について共有物分割訴訟による分割をすることはできません。従来は判例法理でしたが、今回の改正で条文化されます。例外として、相続開始から10年を経過した場合で、相続人から異議が出ない限り、共有物分割訴訟の中で遺産共有状態の部分についても分割手続を行うことができるようになりました。

5.所在等不明共有者の持分取得制度、持分譲渡制度の要件となる

今回の改正で、不動産の共有者の一部が所在不明である場合、裁判所の許可を得て、所在不明者の持分を他の共有者が取得したり、所在不明者の持分についてそれ以外の全員の持分が第三者に譲渡されることを条件にして当該所在不明者の持分も第三者に譲渡したりできる制度が創設されました。これらの制度について、所在不明者の持分が相続財産に属しており、遺産分割手続が必要な場合は、相続開始から10年を経過していないと利用できないとされています。

以上のとおり、今回の改正で「相続開始から10年」という期間が持つ意味が非常に大きくなりました。遺産分割や共有物分割の問題の解決を促したいという立法者の思いがありありと感じられます。遺産分割では、この期間を意識して手を打つ必要があります。

【東京法律事務所】
所属弁護士:若松 俊樹(わかまつ としき)
プロフィール
東京大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了後、弁護士登録以降東京で3年半、茨城県水戸市で6年半強ほど一般民事や企業法務などの分野で執務。現在は東京事務所で活動。趣味は読書や音楽鑑賞、好きな言葉は「鬼手仏心」、「神は細部に宿る」。

民事解決事例Q&A

事例
知人に500万円を貸しましたが、まったく返済がありません。できる限り回収したいのですが、どのように対応すればいいですか。

貸金請求のために必要な証拠は何ですか。

「金銭消費貸借契約書」や「借用書」といった契約書が最も重要です。書面のタイトルはともかく、当事者の名前、貸付金額、返済期限、利息などが定められた書面が残っていれば、その内容にしたがって請求することとなります。
借用書等がない場合には、メールでの本人同士のやりとりや振込の記録などで、貸金の存在を立証する必要があります。なお、振込の記録だけだと、それが「贈与」なのか「貸付」なのかが客観的には分からないことも多いため、注意が必要です。
上記のような証拠がなく、現金手渡しで貸し付けを行い、口頭での約束しか交わしてないとなると、立証は非常に困難といえます。

貸金を回収するためにどのような手段がありますか。

まずは、書面や電話で交渉してみて、相手が任意の交渉に応じない場合には、裁判を起こすことが考えられます。貸金の返済期日が到来してから、裁判をしないまま長期間にわたって請求を放置すると、時効によって、貸金の返還請求権を失うこともありますので、ご注意ください。
裁判を起こすにあたっては、相手に財産があるかどうかを検討する必要があります。裁判を起こして勝訴の判決を得ても、相手に差し押さえの対象となる財産がなければ、回収することができないからです。裁判を起こす前には、なるべく相手の財産(不動産、預貯金口座等)や勤務先等を把握しておくことが重要です。

裁判で勝訴しましたが、相手の財産がどこにあるか分かりません。相手の銀行口座を調査する方法はありますか。

最近、強制執行の実効性を確保するため、民事執行法が改正され、「第三者からの情報取得手続」という制度が新設されました(民事執行法204条~211条)。裁判所が銀行などの第三者に命じて債務者の財産情報を提供させる制度で、差し押さえる財産(特に預貯金口座)の発見・特定が以前より容易になりました。
これまでも、一部の金融機関については、弁護士が所属する弁護士会を通じた調査(弁護士会照会)で、預貯金口座に関する情報の提供を受けられましたが、全ての金融機関から情報提供を受けられるわけではありませんでした。
しかし、今回の改正で、法律上の制度として定められましたので、全ての金融機関から預貯金口座に関する情報の提供を受けられるようになり、スムーズに預貯金口座の調査を行うことができるようになったといえます。

【かしま法律事務所】
所属弁護士:村田 羊成(むらた よしなり)
プロフィール
中央大学法学部卒業、中央大学法科大学院修了後、弁護士登録(茨城県弁護士会)。現在はかしま法律事務所に所属し、主に、交通事故、労災事故、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行い、企業から個人の相談者まで、様々なお悩みや問題の解決に向けて奔走している。

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