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2021.10月号:労働時間管理の実務と法的留意点について

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労働時間管理の実務と法的留意点について

今回は労働時間管理について、法改正に即した実務と留意点をQ&A方式で解説します。

労働時間把握が義務化されたというのですが、どういう対応が必要でしょうか。

労働時間の管理は、本来的に使用者の義務ですが、法的には義務とされおらず、労働時間把握の方法についてはガイドラインが定められていただけでした。それが、法改正により、労働安全衛生法に基づく義務となりました。
原則的には客観的な方法による労働時間の把握が必要とされています。具体的にはタイムカードやICカード等による記録により把握することが想定されています。記録については、3年間保存することも規定されました。
客観的な把握が困難な事情がある場合、自己申告制を利用することも可能とされています。
しかし、自己申告により把握した労働時間が実態と合致しているかの調査をしなければならず、かなりの負担がかかります。上記のようにタイムカードを用いたり、インターネットを利用してアクセスが可能な勤怠管理システムを利用することの方が現実的だと思われます。

時間外労働の上限規制とはなんですか

労働者を月45時間、年360時間以上時間外労働させてはならない、というものです。臨時的・特別な事情がなければ超過は認められません。違反すると6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則も規定されています。
臨時的・特別な事情がある場合にはこの上限を超えることも認められていますが、それでも年720時間、複数月(2~6ヶ月)の平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間(休日労働含む)以内、月45時間を超えられるのは6ヶ月まで、という制限があります。

業種によって例外はありますか

はい。2024年(令和6年)3月末日までは、建設業や自動車運転にかかる事業の場合、適用が猶予されています。
建設業の場合、猶予期間とは災害の復旧・復興を除き上限規制の適用があります。
自動車運転にかかる事業の場合年間上限はさらに延びて960時間とされています。複数月(2~6ヶ月)の平均80時間以内、月100時間以内、月45時間を超えられるのは6ヶ月までという規定はいずれも適用されません。

36協定ではどのような点に気をつけなければならないでしょうか

残業代の上限規制は、健康の確保やワークライフバランスの改善を目的としています。
そこで、36協定で定める事項についての指針が定められています。
労働時間が長くなるほど過労死との関連が強まることに留意し、時間外労働、休日労働は必要最低限にすることとされています。
時間外労働・休日労働を行う業務の区分も細分化し、対象となる業務の範囲を明確にすることも求められます。
また、限度時間を超える臨時的な特別の事情は「業務の都合上必要な場合」とか「業務上やむを得ない場合」といった曖昧不明瞭な記載ではなく、「予算・決算」「ボーナス・年末商戦に伴う繁忙」といった具体的な記載をすることが求められています。

【成田法律事務所】
所属弁護士:宮崎 寛之(みやざき ひろゆき)
プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。日弁連裁判官制度改革・地域司法計画推進本部委員。平成29年度千葉県弁護士会常議員。主に、交通事故、労災事故、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行うと共に、千葉県経営者協会労務法制委員会等の講演の講師も務める。

交通事故解決事例

《事案1》
Mさんは、青信号の横断歩道を自転車で横断していたところ、右側の車線から左折してきた相手方車に巻き込まれ、右手中手骨骨折等の傷害を負いました。相手方保険会社が治療を終えたMさんに提示した示談金額は73万3200円でした。示談金額が低いと感じたMさんは金額が妥当かを判断するため、当法人にご相談されました。

結果

約2.8倍の増額に成功

交渉内容

相手方保険会社の示談金額の内訳を確認すると、相手方保険会社は、休業損害を一日5700円×52日分、慰謝料を通院日数×2倍×4200円で計算していました。ところがこの示談金額は、最低限の補償を目的とする自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」といいます。)の基準で計算した金額、すなわち、仮に裁判になった場合に認められるであろう賠償額より低い金額でした。そのため、休業損害と慰謝料に関して増額が見込めました。
交渉の結果、Mさんが専業主婦であったことから、休業損害を一日1万630円×76.5日分、慰謝料を裁判で認められ得る金額で示談することができました。
示談金額は、相手方保険会社の提示金額の約2.8倍である210万円でした。

《事案2》
Yさんは、バイクで道路を走行していたところ、交差点の左側からYさんと同じ方向の車線に左折しようとする相手方車が左折してきたため、衝突し、左膝蓋骨開放骨折等の傷害を負いました。相手方保険会社が治療を終えたYさんに提示した示談金額は45万6853円でした。示談金額が低いと感じたYさんは金額が妥当かを判断するため、当法人にご相談されました。

結果

約2.8倍の増額に成功

交渉内容

これまでにかかった治療費を積算したところ、相手方保険会社が主張する治療費との相違がありました。相手方保険会社の計算が誤っていたためでした。このように相手方保険会社の計算は誤っていることもあるため、相手方保険会社の計算を鵜呑みにするのではなく、計算が正確かを再計算して確認する必要があります。また、入院雑費は自賠責保険の基準、慰謝料は相手方保険会社の独自の基準で計算されていました。そのため、治療費、入院雑費、慰謝料に関して増額が見込めました。
交渉の結果、治療費を正しい実費で、入院雑費及び慰謝料を裁判で認められ得る金額で示談することができました。
示談金額は、相手方保険会社の提示金額の約2.8倍である128万1273円でした。

さいごに

このように、増額交渉により示談金額が相手方保険会社の提示額から2倍3倍に増額することもあり得ます。しかしながら、増額交渉には、相手方保険会社の計算が正しいかの確認ができること、適正な賠償額の基準を知っていること、裁判で認められ得る額の見立てができること等の専門的な知識や経験が必要です。
弁護士に依頼した方が、弁護士費用を支払っても依頼者の利益になることが多いです。示談で損をしないためにも、増額交渉は経験が豊富な弁護士に任せることをお勧めいたします。

【市川法律事務所】
所属弁護士:永井 龍(ながい りゅう)
プロフィール
立教大学法学部卒業、法政大学法科大学院修了。弁護士登録以降、東京都内の弁護士事務所で一般民事や家事事件などの分野で執務。現在は市川事務所で活動。趣味は写真撮影、好きな言葉は「正直」。

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