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2021年11月号: 法改正 過労死の労災認定基準の改正について

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法改正 過労死の労災認定基準の改正について

本年9月14日、厚生労働省は、過労死などを引き起こす脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」として公表しました。
脳・心臓疾患の労災認定基準については、前回の改正から約20年が経過する中で、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて、厚生労働省の「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検証などを行い、令和3年7月16日に報告書が取りまとめられました。
厚生労働省は、この報告書を踏まえて、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました。
今回の改正のうち、特に重要なポイントは、次の2点です。

1 長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

【改正前】
発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価できることを示していました。
【改正後】
上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できることを明確にしました。

2 長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し

脳・心臓疾患を引き起こす要因のうち、労働時間以外のものとして、新たに認定基準に追加されたもののうち、特に重要な項目は以下の3つです。
① 休日のない連続勤務
休日のない(少ない)連続勤務については、連続労働日数、連続労働日と発症との近接性、休日の数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容等の観点から検討し、評価することとされています。
② 勤務間インターバルが短い勤務
勤務間インターバルとは、終業から次の始業までの時間をいいます。
長期間の過重業務の判断に当たっては、睡眠時間の確保の観点から、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無、時間数、頻度、連続性等について検討し、評価することとされています。
③ 事業場外における移動を伴う業務
事業場外における移動を伴う業務については、移動(特に時差のある海外への移動)の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、移動先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、宿泊を伴う場合の睡眠を含む休憩・休息の状況、業務内容等の観点から検討し、併せて移動による疲労の回復状況等も踏まえて評価することとされました。

今回の改正により、使用者側としては、単に労働者の労働時間を管理するだけでなく、休日や勤務間隔などを含めた総合的な労務管理が要求されることとなります。

【柏法律事務所】
所属弁護士:小湊 敬祐(こみなと けいすけ)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は自然の中でのんびりすること。好きな言葉は「学問救世」。

交通事故解決事例

事例
Aさんは、通勤中の赤信号で停止中、後方から追突され相手方に過失100%ある事故でした。Aさんはこの事故により腰椎捻挫・頸椎捻挫の診断名を受けました。

事故から 1 か月半後、相手方保険会社から「修繕費の金額から、軽微な事故といえる。来月以降は治療費と休業損害の支払いはできない。」と言われました。まだ事故による痛みは継続し、仕事にはまだ復帰できません。どうしたらいいですか。

A1.まずは主治医に相談

相手方保険会社は、昨今、打ち切りの時期が早まっているようです。今回のケースも、相手方保険会社は、車両修繕費が高額ではないことから軽微な事故であると主張し、事故から1か月半で治療費と休業損害の支払いを打ち切りました。
治療費や休業損害の打ち切り連絡があった際は、まずは主治医にご相談ください。主治医が、治療を継続したほうが良い、就労はまだ控えた方が良いと言う場合には、その旨相手方保険会社に申告し、治療費や休業損害の支払いを求めましょう。

A2.通勤災害の場合には労災の検討を

今回の事故は通勤中の事故であったため、通勤災害として労災適用の事案でした。
依頼者の業務は、バスの運転手です。乗客・乗務員の安全確保のため、治療費と休業損害の支払い打ち切り後も業務復帰ができませんでした。そこで、通勤災害として労災申請し、治療費と休業補償を得ながら治療を継続することになりました。

A3.主治医が症状固定と判断したら後遺障害申請の検討を

主治医が症状固定の判断をした場合には、後遺障害申請するか検討します。
Aさんは、事故後1か月半で治療費の支払いが打ち切られ、その後、労災で8か月間治療を継続しました。今回のケースでは、治療期間が争われていたことと、労災での後遺障害が認められやすい傾向にあるため、労災での後遺障害申請と、自賠責での後遺障害申請、共に行いました。
結果として、今回は労災と自賠責ともに後遺障害等級14級9号に認定されました。

その後、相手方保険会社と示談交渉をし、治療期間を争いました。治療費の打ち切り後、治療中に主治医に行っていた医療照会をもとに、打ち切り後の8か月間の治療期間のうち、6か月を治療期間とすることで合意しました。治療費と休業損害、慰謝料、逸失利益を含め依頼者の納得する解決をすることができました。

弁護士が関わった意義

「治療終了までの生活について道筋を立てられたこと」
Aさんは、事故後1か月半で相手方保険会社から治療費・休業損害の打ち切りの連絡を受けました。また、事故直後に依頼した他事務所の弁護士と折り合いがつかず、合意解約された後に当事務所へご相談にいらっしゃいました。その際、労災が使えることをご存知なく、事故後に業務復帰ができず、給与も休業損害も支払われないため、生活に不安を抱えていらっしゃいました。
Aさんには労災が使えること、治療費と休業補償が得られることをご説明し、治療を継続して頂きました。
Aさんは、打ち切り後の生活の見通しがついたことで、不安が軽減し、休業補償を得ながら通院を継続して頂くことができました。事故後1か月半で打ち切りの連絡があった案件でしたが、後遺障害等級認定によりご本人にご満足いただける解決となりました。

【津田沼法律事務所】
所属弁護士:北岡 真理子(きたおか まりこ)

プロフィール
上智大学法学部卒業、上智大学大学院法務研究会修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心として、「最善の解決策が何かをつねに検討し、それを実現させる」という気持ちを大切に、活動を行う。趣味は散歩や小旅行。

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