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2021年12月号: 対立する当事者が同一敷地内の建物に居住していた相続事例

L+PRESS 2021年12月 PDFで見る

対立する当事者が同一敷地内の建物に居住していた相続事例

[ご依頼者]
X、Yさん
[相手方]
Zさん
[被相続人]
Aさん
[解決方法]
調停
[解決までに要した期間]
1年

なお、本件は新型コロナウイルスにより、裁判所の手続きに半年ほどの遅れが生じております。

本件の親族関係

YさんはAさんと同居していました。Yさんの生活はAさんの収入により賄われておりましたが、Yさんも高齢であったため、Aさんの介護は主にXさんがしていました。ZさんはYさんとAさんと同じ敷地内の別の建物に居住しておりました。Yさんの住む建物、Zさんの住む建物、これらの敷地は全てAさんの名義でした。

ご相談のきっかけ

Aさんの遺産分割において、XさんとYさんは、Yさんが遺産不動産の全てを取得することを希望していました。XさんとYさんは、Zさんの家族から暴行を受けたことがあったため、同一の敷地内に居住することは不可能と考えていました。このような状況下、Zさんが遺産のほとんどすべてを相続するといった主張をしだしたため、XさんとYさんは、当事務所に相談に来られました。

相談内容

Yさんは高齢であったため、転居は困難であり、現在の建物を退去することになれば、生活をすることができなくなってしまうという状況にありました。このため、このような事情や、Zさんとの関係を踏まえ、不動産の全てを取得することを希望していました。

受任後の対応

Aさんの遺産には多額の預金がありましたので、Yさんが不動産を全て取得したとしても法定相続分の範囲内でした。しかし、Zさんも同じ敷地内に居住していたため、Zさんが退去してくれるかが問題でした。
Zさんがこれに応じない場合、不動産を共有としたり、分筆したりする方法が考えられましたが、従前の人間関係から、XさんとYさんはこれを希望しませんでした。
本件では、XさんがAさんの介護をしており、Yさんが金銭的な援助をしておりましたので、これらに対して寄与分が認められることが見込まれました。一方、Zさんは、Aさんの預金を引き出していたり、Aさんから借りたお金を返していなかったりしていたため、特別受益等が認められる可能性がありました。このため、法的な権利を突き詰めれば、XさんとYさんが遺産の大部分を取得できる可能性がありました。
しかし、これらの主張を行った場合、Zさんが不動産を退去しなくなる懸念がありました。このため、XさんとYさんは、Zさんの退去を優先し、これらの主張を控えることとしました。
調停において何度も議論を重ね、最終的には、Yさんが不動産の全てを取得し、Zさんが退去する内容で合意が成立しました。

本件における弁護士の意義

本件では、不動産以外にも寄与分や特別受益等、30年ほどに渡り、多数の問題が入り組んでいました。このため、XさんやYさんですら事実関係が把握しきれておらず、これらの事実関係を弁護士と一緒に整理していきました。そのうえで、XさんとYさんにどのような権利があるのか、実際に権利を主張した場合にどのような解決が考えられるのかを何度も協議し、解決の方向性を決めました。
このような事実関係の整理、権利関係の把握、解決の方向性については、法的な知識のみならず、調停における弁護士の経験が不可欠なものでした。最終的には、調停申立て前に予定していたとおりの内容で合意を成立させることができました。
XさんとYさんには大変喜んでいただき、Xさんからは何度もお礼のお手紙をいただきました。私としては思ったとおりの解決ができたことも嬉しかったのですが、何よりもXさんとYさんに喜んでいただけたことに一番の喜びを感じています。

【千葉法律事務所】
所属弁護士:今井 浩統(いまい ひろのり)

プロフィール
東北大学法学部卒業、早稲田大学法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味はソフトテニス、ゴルフ、アコースティックギター、ドライブ。

交通事故解決事例

事例
Aさんは、自動車で信号待ち中、後ろからきた車に追突され、頸椎捻挫のケガを負いました。Aさんは、事故から4か月ほど整形外科で治療をつづけ、主治医からも「まだ通った方がいいですね。」と言われていました。ところが、保険会社から「4か月を過ぎたら、もう治療費は支払えない」との連絡がきたため、困ったAさんは弁護士への相談にいらっしゃいました。

保険会社から「治療費をもう支払えない」と言われた場合、治療はやめなければならないのでしょうか。

治療が必要な期間を決めるのは、実際に診察をしている医師であって、保険会社ではありません。そのため、主治医が、まだ治療が必要だと判断している場合、治療を続けることが望ましいです。必要な治療をやめてしまうと、認定されるべき後遺障害が認定されなくなったり、本来もらえるはずの慰謝料が減ってしまったりすることもあります。
治療費立替の負担を減らすため、健康保険や労災保険を使って治療を続けることができます。
Aさんの場合、主治医が「トータル半年は通院した方がよい」という判断をしていたため、2か月間健康保険を使って治療を続けました。

保険会社が立て替えた治療費を支払ってくれません。どのような手段がとれますか。

治療終了後、立て替えた治療費の請求を行うことになります。また、慰謝料は、通院の期間の長さに応じて増額しますので、実際に通院した期間分の慰謝料もあわせて請求します。
Aさんの事件では、こちらの請求に対し、保険会社は「治療期間は4か月だけしか認めない」と主張し、健康保険への切り替え以降の治療費や慰謝料の支払いを拒否しました。
交渉ではAさんが本来受けるべき賠償を受けることができなかったため、弁護士が「交通事故紛争処理センター」への和解あっせん申し立てを行いました。

「交通事故紛争処理センター」とは何をするところですか。

交通事故紛争処理センター(以下「紛セン」と略します)は、自動車事故の被害者と加害者側との示談についての争いを解決するため、和解のあっせんや審査を行ってくれる機関です。交通事故に精通した弁護士が、あっせん人として当事者の間に入り、話し合いを進めてくれます。
Aさんの事件では、あっせん人が、「半年の治療期間は長すぎることもないし、医師も治療が必要と言っている。請求額は不当なものではない。」との意見を述べて、保険会社に譲歩を促してくれました。そのため、治療費は立替分全額、慰謝料もほぼ満額で、和解をすることができました。Aさんは、保険会社の主張額より40万円ほど多い金額を獲得することができました。

保険会社から治療費を打ち切られると、「治療をやめて示談しなければならないのでは」と不安になる方もいらっしゃると思いますが、Aさんの例のように必要な治療と賠償を受けることができる場合もありますので、対応に困った場合にはご相談いただければと思います。

【船橋法律事務所】
所属弁護士:三浦 知草(みうら ちぐさ)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。

主に、交通事故、相続などを中心に活動を行う。趣味は読書、野球・ボクシング・相撲のTV観戦。

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