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2022.3月号:グレーゾーン解消制度について

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グレーゾーン解消制度について

新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、これまでの事業のやり方ではなく他のやり方を模索したり、これまでになかった新しい事業を始めようと考えている事業者の方も多いと思います。新規事業や新しいサービス(以下「新事業活動」といいます。)を始める際、法令の規制の適用はないと思い込んでいたり、法令の調査をしてもよく分からないのでとりあえず始めてみたけれども、実際には法令の規制に反していたということもあります。すでに始めてから気づいた場合、取引先や顧客とトラブルが生じて信用を失ったり、罰則が科せられかねません。

このような事態を避けるため、予め、新事業活動の具体的な事業計画に対する法令の規制の適用の有無を確認できるのが、「グレーゾーン解消制度」です。平成26年から施行された「産業競争力強化法」に基づくもので、新しい制度ではありませんが、これまでの事業活動からの変化を迫られている業種も多い現在、積極的に利用すべき制度として紹介します。

事業者がこの制度を利用する際は、新事業活動の事業計画と確認したい事項を整理し、事業所管省庁に相談の上で照会手続きを行います。これを受けて、規制所管省庁からの回答が原則1か月以内に事業所管省庁を経由して、事業者に通知されます。照会に対する回答として、規制を受けないと判断された場合には、新事業活動を適法に実施することが明らかになります。なお、規制の適用を受けると判断された場合には、「新事業特例制度」を利用して、規制所管省庁に規制の特例措置を講じてもらうことも考えられます。

グレーゾーン解消制度を上手に利用するポイントは、確認を求める法令等の条項と確認事項を的確に不足なく記載することです。この制度を利用して確認されるのは、照会のあった法令に基づく規制の適用の有無に限定されています。したがって、新事業活動が全ての法令に違反せず、合法であることが確認されるわけではありません。確認を求める法令等の条項と確認事項が的外れであったり、不足していると、この制度を利用した意味がなくなってしまいます。事業者自身では、どの法令が関係するのか分からないような場合には、弁護士等の専門家に相談をした上で、照会手続きを行うことも必要です。

実際にあったグレーゾーン解消制度の活動実績が各省庁の ホームページに掲載されています。
グレーゾーン解消制度は、事業者が安心して新事業活動を実施できるよう後押しすることを目的として作られた制度ですので、新たなことに挑戦しようと考えている方は積極的に利用をご検討ください。

【かしま法律事務所】
所属弁護士:齋藤 碧(さいとう みどり)
プロフィール
山形大学人文学部総合政策科学科卒業、大阪大学大学院高等司法研究科修了後、弁護士登録(茨城県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は物を作ること、読書、音楽鑑賞。

交通事故解決事例

事案
飲食業を営むHさんは、自転車優先道路を自転車で走行していたところ、前方の前記道路上に加害者車両が駐車されていたため、当該車両を回避するため、当該車両の右脇を通過しようとしました。すると、運転席側のドアが突然開き、Hさんの顔面にドアが突き刺さる形で接触、Hさんは転倒しました(以下「本件事故」といいます)。本件事故により、Hさんは左頬部挫創等の傷害を負いました。

Hさんにも過失はありますか

Hさんにも0~10%の過失があると考えられます。過失割合の検討には、裁判例等から事故類型により過失割合を基準化した『別冊判例タイムズNo.38』(以下「判タ」といいます)を用います。事故類型から基本過失割合を確認し、基本的過失割を変動させる修正要素があれば適宜修正し、本件事故の過失割合を導きます。判タによれば、本件事故の基本的過失割合は10(単車):90(四輪車)でした。
次に、基本的過失割合を変動させる修正要素を検討すると、本件では、①単車ではなく、自転車であること(適宜減算)、②直前ドア開放(-10%)があったことが修正要素として考えられました。したがって、修正後過失割合は0:100になり得る事故といえます。
そこで、本件では、前記①及び②を主張して、過失割合0:100を主張しました。これに対し、相手方保険会社は、②直前ドア開放を否定、他の修正要素(+10%)を主張して、過失割合を争いました。
意見が折り合わなければ訴訟で解決することになります。しかし、Hさんとしては、後述のとおり訴訟には消極的でした。そのため、結論としては、物損に関し0:90、人損に関し10:90で和解することになりました。

醜状障害として12級が認定されました。逸失利益は請求できますか。

請求できる可能性があります。顔面部に長さ3cm以上の線状痕が残った場合、後遺障害12級に認定されます。Hさんは、3か月治療を続けましたが、左頬部に長さ約40mmの線状痕が残り、12級に認定されました。
本件でいう逸失利益とは、醜状がなければ得られたであろう収入のことをいいます。すなわち、醜状が原因で、Hさんのお店の売上が下がる場合の、収入の減少分が逸失利益となります。
もっとも、醜状が原因で収入が下がったとする因果関係はあいまいで、裁判例上、逸失利益は認められたり認められなかったりしているのが現状です。実務上は、①醜状痕のために労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれがある場合(配置転換による減給等)は逸失利益を認める、②直接的な影響は認め難いが、間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれがある場合(対人関係等が消極的になるなど)には、慰謝料を増額する、③①②のいずれでもない場合には、慰謝料の増額もないとの考えがあります。
本件では、Hさんが飲食業を営んでおり、自らカウンターに立って接客をしていることから、前記①にあたるとして、逸失利益を主張しました。これに対し、相手方保険会社は、前記③を主張し、これを争いました。
そこで、逸失利益についても訴訟での解決を検討しましたが、Hさんとしては、実際には醜状が原因での売上減少はなく、訴訟提起にも精神的負担を感じるとのことから、訴訟での解決は断念しました。そこで、本件では、前記②を主張し、慰謝料を100万円増額させることで和解を成立させました。

【津田沼法律事務所】
所属弁護士:永井 龍(ながい りゅう)
プロフィール
立教大学法学部卒業、法政大学法科大学院修了。弁護士登録以降、東京都内の弁護士事務所で一般民事や家事事件などの分野で執務。現在は津田沼事務所で活動。趣味は写真撮影、好きな言葉は「正直」。

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