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2022.6月号:新たな働き方の推進と労務管理のあり方について

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新たな働き方の推進と労務管理のあり方について

今回は、「テレワーク」・「副業兼業」・「フレックスタイム制」について、Q&A方式でその内容の重要ポイントをお伝えします。

テレワークを導入する際の手順で注意すべき点は何ですか?

テレワークの導入にあたっては、就業規則その他のテレワークに関する規定の整備が必要です。労務管理で最重要のルールは「就業規則」ですが、これにテレワークを命ずることがある旨の記載が必要になりますし、就業規則を改定するとなったら労働者代表の意見聴取等の法定の手続きの必要もでてきます。
また、適切な勤怠管理のために離席や電話対応等についての細則的な規定を定めることも重要になってきます。

実際に従業員にテレワークをさせる場合の注意点は何ですか?

テレワークは労務時間の管理がしにくく、また公私の境界があやふやになりやすい部分があります。勤怠ルールや残業の事前承認制を徹底するとともに、メール送付の時間を制限するなどし、勤務時間と私的時間のできる限りの峻別を図ることが重要になります。
また、テレワークは後述のフレックスタイム制との相性が良いため、同時に導入をすることで労務管理負荷を下げることも考えられます。

従業員の副業兼業は必ず認めなくてはならないのでしょうか?

憲法上「職業選択の自由」がありますから、勤務時間外については原則として副業・兼業(以下「副業」といいます。)を認める必要があります。副業を全面的に禁止し、会社側が敗訴した裁判例もあります。もっとも、会社としても会社のノウハウや信用などを守る必要がありますから、合理的な範囲の制限は可能です。例えば、副業を許可制・届出制とし、競業関係にある業種や取引信用上問題のある業種に限っては禁止することなどは合理的な範囲の制限と思われます。

従業員が副業を申請した場合の労務管理上の注意点は何ですか

副業が自営業ではなく他の使用者に雇用されるものである場合、労働時間が副業先と通算されますので、時間外割増賃金の支払い義務の範囲に注意を払う必要があります。厚労省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で「管理モデル」という簡易に上記の課題を判定するための手法が提案されており、参考になります。

フレックスタイム制のメリット・導入時の注意点は何ですか

フレックスタイム制は、労基法が定める厳格な労働時間規制の 例外メニューの一つです。労働者に出退勤の自由を委ねることを条件に、1日8時間・週40時間の労働時間規制が緩和され、法定時間外割増賃金のコスト削減を図ることができます。注意点としては、従業員に出退勤の自由を委ねる以上、具体的に残業を命ずることができなくなることや、清算期間全体の法定総労働時間の枠を超えた場合は別途時間外割増賃金を支払わなくてはならないことに変わりはないことから、労働時間管理をしなくてよいわけではない点が挙げられます。

【市川法律事務所】
所属弁護士:小林 貴行(こばやし たかゆき)
プロフィール
早稲田大学政治経済学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、中小企業法務(労務問題)を中心として、「最後の解決の時まで、事件の状況の変化に従ってあるべき道すじを考え続け、お示しする」気持ちを大切に、活動を行う。

駐車場内での事故における過失割合

1 事案の概要

Xさんは、スーパーで買い物をしようと車両をスーパーの駐車場内に進入させたところ、前方を車両にて走行していたYさんが駐車しようと後退してきたことから、Yさんの駐車を待とうと停車させ、待機していました。そのような中でYさんは、Xさんに気が付かずにそのままバックしたところ、Xさんと衝突してしまいました(衝突箇所は、Yさんの右後付近とXさんの左前付近)。幸いにして、Xさん・Yさんにはお怪我等はありませんでしたが、Xさんの車両は一部損傷し、修理費等の損害が生じました。

2 過失割合について

過失割合を判断するにあたっては、実務上、『別冊判例タイムズNO.38』(以下、「判タ」といいます。)が参考にされます。判タは、過去の裁判例等から事故類型ごとに想定した事故態様に応じた一応の目安として、基本的な過失割合が示めされたものです。
もっとも、交通事故は、千差万別なものでありますから、事案の個別的・具体的な内容・事情に応じて、基本的な過失割合から適宜、修正要素も考慮しながら過失割合が決定されることとなります。

3 駐車場内の過失割合

判タには、駐車場内での事故についても掲載されておりますが、前記事案と同様と考えてよいケースが掲載されておりませんでした。そのため、裁判例に頼る他ありませんでした。
Yさんは、1つの裁判例(千葉地裁平成23年10月18日判決)を根拠にX:Y=3:7での過失割合を主張しておりました。かかる裁判例では、XはYの後退の妨げにならないように適切な位置に停車していなかったこと及び事故を警告するためのクラクションを鳴らし損ねたことを理由に上記のとおりに過失割合が認定されておりました。事故状況としましてはXさんの事案は、前記裁判例に類似したものでありましたが、Xさんはわずかながらもバックを試みた事情もあったことから、私は、裁判例の過失割合からは修正されるべきと主張し、結局のところX:Y=2:8で合意に至りました。
駐車場内における事故においても様々な態様がありますが、特に駐車態勢に入っている車両を認識していた後方車両の過失について、裁判例は重く見ている傾向にあるかと思います。それは、駐車場が駐車のための施設であり、当然、駐車のために後退する行為は目的に沿った行為であるから、後方車は前方車に比して重い注意義務を負っているとの価値判断が働いているのも1つの理由だと考えられます。

4 おわりに

仮に、前記事例でXさんが停車せずに進行していた場合には、判タによりますと、基本的な過失割合は、X:Y=8:2となり、前記事例とは過失割合が逆転することとなります。
このように、過失割合の判断には難しさが伴うところであり(駐車場内の事故に限った話ではありませんが)、お悩みの際には是非とも弁護士にご相談ください。

【千葉法律事務所】
所属弁護士:大﨑 慎乃祐(おおさき しんのすけ)
プロフィール
専修大学法学部法律学科卒業、専修大学法科大学院法務研究科修了。弁護士登録以降、交通事故や一般民事、刑事事件などの分野で執務。趣味はサッカーやジョギング、好きな言葉は「文武両道」。

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