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2022年7月号: 法改正「インボイス制度の登録期限延長」

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法改正「インボイス制度の登録期限延長」

令和4年税制改正により、いわゆるインボイス制度の適用を受けるための登録期限が、大幅に長くなりました。

1 インボイス制度の概要

まず、インボイス制度の概要を確認しておきましょう。
そもそもインボイスとは、法律上は「適格請求書」といい、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類・データのことを指します。消費税率の引き上げに伴い標準税率と軽減税率の2つの税率が混在する状態になったことが、制度創設の趣旨と言われています。
インボイス制度の開始後は、売り手側、買い手側のそれぞれで、以下の対応を行わなければなりません。

2 買い手の対応

まず、買い手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売り手)である「登録事業者」から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。
買い手としては、仕入税額控除の適用ができない業者との取引は事実上困難となりますから、取引時にはまず、売り手側がインボイス制度の登録事業者であるか否かを確認する必要があります。
ただし、買い手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、インボイスに必要な一定の事項が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

3 売り手の対応

次に、売り手は、買い手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません。また、交付したインボイスの写しを一定期間保存しておく必要があります。
適格請求書を発行するには、税務署長に対して登録申請を行い、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があります。
ただし、適格請求書発行事業者となることができるのは、消費税の課税事業者のみであるという点に注意が必要です。これまで消費税の納税義務が免除されていた免税事業者にとっては、取引先の状況等を踏まえ、消費税の課税事業者になってまで適格請求書発行事業者の登録をするか否か、難しい判断を迫られることになります。また、いったん消費税の課税事業者になると、免税事業者に戻ることを2年間制限されることにも注意が必要です。

4 インボイス制度の登録期限延長

インボイス制度は令和5年10月1日より開始されます。
本来、課税事業者となるためには、前の事業年度までに届出書を提出しなければなりません。しかし、インボイス制度の普及のための特例として、免税事業者であっても申請書を提出して登録を受けた日から適格請求書発行事業者(かつ課税事業者)となることが可能となっていました。
令和4年の税制改正では、この登録期限の特例の期限がさらに延長されています。具体的には、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ければ、その登録日から適格請求書を発行できるようになりました。
課税事業者に転換するか迷っている免税事業者の方は、しばらく様子を見てもよいかもしれません。

【柏法律事務所】
所属弁護士:小湊 敬祐(こみなと けいすけ)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は自然の中でのんびりすること。好きな言葉は「学問救世」。

交通事故解決事例

事例
兼業主婦のAさんは、交通事故で腰椎捻挫の怪我を負い、7か月間治療をしました。しかし、治療終了後も腰部に痛みが残存したため、後遺障害の申請をしたところ、後遺障害等級第14級9号と認定されました。

(兼業)主婦であっても、休業損害が認められますか?

主婦であっても、交通事故による怪我のために家事労働ができなかった場合には、休業損害が認められます。これを一般的に「主婦休損」といいます。
また、専業主婦でなく兼業主婦であっても、現実の収入額が女性労働者の平均賃金よりも低い場合には、主婦休損が認められる場合があります。

主婦休損はどのように算定するのですか?

主婦休損の算定基準は様々であり、任意保険会社の基準と弁護士が交渉で使用する基準とでは、金額が大きく変わってきます。
任意保険会社は、国が加入を義務付けている自賠責保険と同様の基準で主婦休損を算定している場合が多く、金額としてはかなり低額なものとなってしまいます。また、そもそも主婦休損が計上すらされていない場合も多々あります。
一方で、弁護士は、裁判所の基準(裁判であればどれぐらいの金額が認められるか)で主婦休損を算定しますので、自賠責保険の基準で算定した場合よりも高額になることが多いです。
具体的な算定基準など、詳細につきましては、弁護士にお聞きいただければと思います。
Aさんの場合、主婦休損について、任意保険会社の提案では約30万円でしたが、弁護士が交渉したところ、約76万円となり、大幅な増額となりました。

後遺障害に認定されるとどのような補償が受けられるの
ですか?

治療終了時に後遺症(治療を続けたのに完治せず、将来的に回復が見込めない症状が残っていること)が残る場合には、後遺障害等級認定手続を行います。そこで後遺障害として認定された場合には、後遺障害等級に応じた①逸失利益、②慰謝料が支払われます。
なお、頚椎捻挫・腰椎捻挫などのいわゆるむち打ち症の場合には、後遺障害等級14級9号の神経症状(痛み・痺れなど)が認定される場合がほとんどです。
Aさんの場合、任意保険会社の提案は、逸失利益が約50万円、慰謝料が32万円であり、後遺障害等級14級の自賠責保険金75万円とあまり変わらない金額でした。しかし、弁護士が交渉したところ、逸失利益が約87万円、慰謝料が約93万円となり、大幅な増額となりました。

おわりに

Aさんは、任意保険会社から約120万円の賠償額の提示をされましたが、これが適切なものであるかが分からず、相談にいらっしゃいました。
任意保険会社が被害者に提示する賠償額は低額な場合が多く、弁護士が交渉した場合、最終的な賠償額は増額することが多いといえます。特に、主婦休損や後遺障害の逸失利益・慰謝料などは大幅に増額することも多々あります。
Aさんからご依頼を受け、弁護士が交渉をしたところ、最終的な賠償額は300万円と約180万円の増額となりました。
任意保険会社から提示された賠償額が適切な額かどうか分からず困っているという方は、ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。

【市川法律事務所】
所属弁護士:西池 峻矢(にしいけ しゅんや)

プロフィール
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。
弁護士登録以降、交通事故や一般民事、家事事件などの分野で執務。趣味は野球やラグビーなどのスポーツ観戦、好きな言葉は「意志あるところに道は開ける」。

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