ニュースレター

2023年1月号: 法改正(令和3年民法等改正)について

L+PRESS 2023年1月 PDFで見る

法改正(令和3年民法等改正)について

1 令和3年民法等改正のあらまし

令和5年4月から、令和3年に成立した改正民法・不動産登記法等が、段階的に施行されます。
今回の民法等改正では、所有者のわからない土地の発生を予防し、こうした土地の利用を円滑化するため、既存な改正に加え、新
たな制度の創設も予定されています。
本コラムでは、令和5年4月1日に施行される改正民法のうち、共有制度の見直しについて解説します。

2 共有制度の見直し

土地や建物などの不動産が共有状態になっていると、法律上、不動産の管理に支障をきたすことがあります。
民法上、共有物の変更(農地から宅地への転用、建物の取り壊しなど)を行うためには、共有者全員の同意が必要です。共有物の変更には至らない管理行為であっても、共有者の持分の過半数の同意が必要となります。
共有者の全員が近居の親族であるなど、すぐに連絡を取れる状態であればよいのですが、行方不明の親族が共有者であったり、見ず知らずの他人が共有者であったりすると、共有物の管理が困難となっていました。

①賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理
今回の改正で、共有物の管理について賛否を明らかにしない共有者がいる場合、裁判所の許可を得て、他の共有者による意思決定ができるようになりました。
たとえば、共有者がA・B・C・D・Eの5名(共有持分はそれぞれ5分の1)である砂利道につき、AとBがアスファルト舗装をすること(管理行為)について他の共有者に連絡(事前催告)をしたところ、Cは反対、DとEは賛否を明らかにしなかった場合、裁判所の決定を得れば、舗装工事が可能となります。DとEを除いた3名の共有持分のうち、AとBの2名によって過半数となり、管理行為をすることができるのです。
ただし、この制度で可能なのは共有物の管理までで、共有物の変更を行うことはできません。

②所在等不明共有者がいる場合の変更・管理
共有者の一部の所在が不明であり、調査を尽くしても所在が判明しない場合には、裁判所の許可を得ることで、共有物の変更も可能となります。
先の例で、C・D・Eの所在が不明で調査を尽くしても判明しない場合、AとBは、裁判所の許可を得て、第三者に対し土地の賃貸(共有物の変更とされる場合が多い)を行うことができます。
ただしこの制度によっても、所在が判明しない共有者が持分を失うことになる行為(抵当権の設定など)を行うことはできません。

③所在等不明共有者の不動産の持分の取得
所在が判明しない共有者の持分を買い取るための新たな制度も創設されました。
これまで、共有物分割訴訟という方法で持分買取を行うことができましたが、手続きの負担が重いほか、共有者の氏名や住所が不明の場合には、対応することができませんでした。
このため改正民法では、裁判所の許可を得て、簡易な手続きで所在不明の共有者の持分を取得することができるようになりました。共有持分の買い取り代金は裁判所が決定し、買い取った共有者が法務局に供託します。
共有持分を取得してしまえば、共有物の変更、管理が容易になります。

3 おわりに

このほか、共有物についてだけでも様々な改正点があります。共有物の管理にお悩みの方は、改正法施行にあわせて弁護士にご相談されることをお勧めします。

【柏法律事務所】
所属弁護士:小湊 敬祐(こみなと けいすけ)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は自然の中でのんびりすること。好きな言葉は「学問救世」。

交通事故解決事例

1 事案の概要

Xさんは、ペットの散歩のため道路の左端を歩行していたところ、後ろから前方不注意であった車両が走行してきてそのまま、轢かれました。Xさんは、右足や右足指の骨折という重傷の怪我を負いました。入院の上、治療後、骨は癒合(骨がくっつくこと)しましたが、痛みが残っていたことから後遺障害を申請したところ、14級9号の認定を受けました。Xさんは、事故前、仕事をしつつも家庭では家族の家事を負担する兼業主婦でありました。もっとも、Xさんは、事故時、残り一か月で定年退職する状況にあり、約1か月弱の入院後、仕事の方はそのまま退職することとなりました。

2 相手方に請求できる損害

一般的に交通事故に遭った際には、治療費及び通院交通費の他に、休業損害入通院慰謝料といった交通事故と因果関係のある損害を相手方に請求することができます。また、後遺障害が残存した場合には、上記に加えて、認定された後遺障害の等級に応じ、後遺障害慰謝料及び逸失利益といったものも請求することができます。
今回の事例では、休業損害と逸失利益について言及したいと思います。

3 本件における休業損害

Xさんは、退院後も痛みや手術に伴う入院等で事故前のようには家庭では家事を負担することが出来ませんでした。そこで、Xさんには同居の家族や事故前に具体的にどのような家事を負担していたのかの報告書を作成してもらいました。そして、在職中であった事故後の約1か月は仕事の休職による休業損害を請求し、報告書を参照して退職後は主婦としての休業損害を相手方に請求しました。最終的には治療期間が長かったこともあり、休業損害として約261万円認められました。

4 本件における逸失利益

逸失利益とは、一般に事故がなければ将来得られたであろう収入のことといわれております。定年退職者であっても、現に就労している場合や就労の蓋然性がある場合には逸失利益は認められます。
本件では、当初は、事故前である定年退職前の収入を基準として逸失利益を算定するように主張しました。しかし、Xさんは定年退職後、無職であり、その後再就職する等の予定もなく、上記は叶いませんでした。もっとも、Xさんは主婦でありますから、賃金センサス(性別、年齢、学歴等の別に平均収入をまとめたもの)の学歴計・女性を基準として算定した逸失利益が認められました。

5 おわりに

Xさんは、定年退職直前の事故でありましたが、最終的には総額で約580万円の示談金を獲得することができました。Xさん同様に定年退職者や高齢者の方であっても休業損害や逸失利益を請求できる場合がございます。
交通事故に遭われた際には、適正な損害賠償を受けるためにもお気軽に弁護士にご相談ください。

【千葉法律事務所】
所属弁護士:大﨑 慎乃祐(おおさき しんのすけ)

プロフィール
専修大学法学部法律学科卒業、専修大学法科大学院法務研究科修了。弁護士登録以降、交通事故や一般民事、刑事事件などの分野で執務。趣味はサッカーやジョギング、好きな言葉は「文武両道」。

一覧へ戻る

0120-13-4895

お問合せ