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2023年2月号: 「多様な働き方」に関する近時の法改正と法的留意点

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「多様な働き方」に関する近時の法改正と法的留意点

2022年10月の千葉経協労働法フォーラムにおいて「多様な働き方(女性・高齢者雇用等)を巡る近時の法改正と法的留意点」について解説を致しました。
本Q&Aではその内容の重要ポイントをお伝えします。

女性活躍推進法とはどのような法律なのですか。近時の改正はどのような内容ですか?

女性活躍推進法とは、「自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする」「女性」が、その「個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍」できる社会を実現することを目的として、様々な施策を規定した時限立法(令和8年まで)の法律です。
具体的に企業ら雇用主に課せられた義務としては、「事業主行動計画」として女性の活躍に資するような計画(積極登用・積極評価・教育訓練・長時間労働是正・企業風土改善など)を立てることや、関連情報の公開などがあります。
近時の改正では、令和元年に「常用労働者301人以上の雇用主に、男女賃金の差異の開示義務付ける」との改正がされており、男女で賃金に一定の差異がある場合、その理由を合理的に説明できるようにすることが法的に求められるところとなっています。

男女雇用機会均等法の改正等により、ハラスメント対策が強化されたと聞きました。どのような改正がなされたのですか?

令和元年の男女雇用機会均等法の改正により、セクハラ・マタハラ対策は一層強化されています。セクハラ・マタハラへの対策を行う責務が国だけでなく事業主や労働者にもあることが明確化されたほか、こうしたハラスメントを事業主に相談したことを理由とする不利益取り扱いの禁止が実定化されており、ハラスメントの申し出に対して誤った対応を事業主がしてしまった際の法的リスクは重いものとなっております。
そのほか、自社の従業員が他社の従業員に対してハラスメントを行ってしまった場合の事業主の協力努力義務なども盛り込まれ、ハラスメントを許さない社会への事業主の対応は重要な課題として認識すべきものとなっています。

育児介護休業法の近時の改正で設定された「育休の個別の制度周知・休業意向確認」制度と、「産後パパ休暇」制度について教えてください。

令和3年に育児介護休業法が改正されたことにより、この2つの制度への対応が雇用主に義務付けられています。
「育休の個別の制度周知・休業意向確認」制度とは、従業員から「本人又は配偶者が妊娠又は出産した」との申出があった際に、その従業員に個別に①育児休業制度や産後パパ育休制度の概要②育休等の申出先③育児休業給付制度④社会保険料の取り扱い の4点を説明し、育休等の取得の意向を個別に確認することを義務づける制度です。女性労働者の妊娠だけでなく、配偶者が妊娠した男性労働者にも個別に説明して休暇取得の意向を聴取する必要がありますのでご留意ください。
また併せて、令和3年改正では「出産時育児休業」、いわゆる「産後パパ休業」も導入され、通常の育休に加えて出産直後の特別の休業として子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能な休業制度が導入されています。出産時育児休業も、取得の申し出があった場合には休業を拒否することは違法となりますので、雇用主は十分に意識づける必要があります。

【市川法律事務所】
所属弁護士:小林 貴行(こばやし たかゆき)

プロフィール
早稲田大学政治経済学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、中小企業法務(労務問題)を中心として、「最後の解決の時まで、事件の状況の変化に従ってあるべき道すじを考え続け、お示しする」気持ちを大切に、活動を行う。

交通事故解決事例

1 事案の概要

Aさんは信号機の設置されていない横断歩道を歩行していたところ、自動車と衝突し転倒してしまい、左脛骨高原骨折・左膝関節打撲傷の傷害を負いました。Aさんは2か月間入院をした後、約2年間整形外科にてリハビリ治療を行いましたが、左膝部に痛みが残ってしまいました。
Aさんは後遺障害等級の認定手続を行い、後遺障害等級第14級9号(「局部に神経症状を残すもの」)に認定され、保険会社から約180万円の賠償案を提示されました。
Aさんは後遺障害等級の認定結果や保険会社から提示された賠償案が妥当なものなのか分からず、当事務所に来所されました。

2 後遺障害とは?

治療を継続したのに完治せず、将来的に回復が見込めない症状(痛みや可動域・機能制限など)が残ってしまった場合には、損害保険料率算出機構という第三者機関に対して、後遺障害等級を認定してもらう手続を行います。
そこで後遺障害として認定された場合には、後遺障害等級に応じた①逸失利益(後遺障害がなければ得られたであろう将来の収入の前払い)、②後遺障害慰謝料(後遺障害が残ったことに対する慰謝料)が支払われます。

3 異議申立てとは?

後遺障害等級の認定結果について不服がある場合には、不服申立ての手続を行うことができます。これを「異議申立て」といいます。
異議申立てによって後遺障害等級の認定結果が覆る確率は約15%となっており(損害保険料率算出機構「自動車保険の概況(2021年度版)」)、決して高い確率とは言えません。しかしながら、一定数等級の変更が認められていることからも、後遺障害等級の認定結果について納得がいかない場合には、新たな医学的資料を提出するなどして異議申立てをすべきであるといえます。

4 Aさんの場合

医師が記載した後遺障害診断書に「レントゲン:変性あり」、「MRI:変性あり」と画像上、客観的な異常所見を認めるような記載があったにもかかわらず、この点が後遺障害等級の認定においてはあまり考慮されていませんでした。
そこで、この点を指摘し、新たな医学的資料として医師が作成した診療録(カルテ)を提出の上、異議申立てを行いました。
その結果、「左脛骨の外側に高原骨折が認められ、これに伴い関節面の不整が残存しており、Aさんの左膝部の痛みは客観的に証明されているといえることから、後遺障害等級第12級13号(「局部に頑固な神経症状を残すもの」)に該当する」として、等級の変更が認められました。

5 おわりに

Aさんの事案では異議申立てが認められ、後遺障害等級第12級13号が認定されたことから、最終的な賠償額は約750万円と大幅な増額となりました。また、Aさんの事案は、仮に異議申立てが認められなかったとしても、保険会社から提示された賠償案が低額なものであったことから、弁護士に依頼をすることで賠償額の増額が見込まれる事案でもありました。
後遺障害等級の認定結果や保険会社から提示された賠償案が妥当なものなのか分からずにお困りの方は、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。

【市川法律事務所】
所属弁護士:西池 峻矢(にしいけ しゅんや)

プロフィール
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。
弁護士登録以降、交通事故や一般民事、家事事件などの分野で執務。趣味は野球やラグビーなどのスポーツ観戦、好きな言葉は「意志あるところに道は開ける」。

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