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2023年3月号: 相続土地国庫帰属制度が始まります

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相続土地国庫帰属制度が始まります

相談者の方から、「土地を相続したけれど使い道がないので要らない」、「固定資産税がかかるだけなので処分したいが何か方法はないか」というご相談をお受けすることが少なくありません。このような土地は農地や森林などが多く、売却先が見つからず、処分ができずにそのままになってしまうことがほとんどです。また、そのような土地は、相続人もほしがらないため、何代も前の先祖の名義のままといったこともあります。
このような背景もあり、相続等で取得した土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設するため、新たに相続土地国庫帰属法が作られ、令和5年4月27日から運用が始まります。
相続土地国庫帰属制度は、相続又は相続人に対する遺贈により土地の所有権又は共有持分を取得した者等が申請者として法務局に承認申請をし、法務大臣による要件審査・承認を受け、申請者が10年分の土地管理費相当額の負担金を納付することにより土地を国庫帰属させるという制度です。国庫に帰属した土地は、国が管理・処分することになります。
ただし、どのような土地でも国庫帰属させることができるわけはなく、承認申請と承認には要件があります。

承認申請は、

  1. 建物が存する土地
  2. 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 道路その他の他人による使用が予定されている土地(墓地、境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地)が含まれる土地
  4. 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
  5. 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

については、却下されることとなります。

また、以下のような不承認要件がある場合には、承認されないこととなります。

  1. 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  2. 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  3. 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  4. 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理又は処分ができない土地
  5. 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地

といった要件で、審査が行われ、実地調査がされることもあります。
承認された場合、国に所有権を移転させるためには、負担金の額の通知を受けた日の翌日から30日以内に一筆の土地ごとに20万円が基本となる負担金を納付する必要があります。森林や一定の地域の場合には面積に応じて負担金が算定されることとなっています。
制度の開始に先立ち、所有している土地を国に引き取ってもらえそうか知りたい、申請書類に不備がないか確認してほしいなどの具体的な疑問について、都道府県の法務局・地方法務局(本局)での相談対応が開始しています。

【かしま法律事務所】
所属弁護士:齋藤 碧(さいとう みどり)

プロフィール
山形大学人文学部総合政策科学科卒業、大阪大学大学院高等司法研究科修了後、弁護士登録(茨城県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は物を作ること、読書、音楽鑑賞。

交通事故解決事例 「評価損の請求」

【事案】
Kさんは、信号待ちで停車中に後続車に追突され、負傷し、交通事故の対応を依頼するために弊所へ相談に訪れました。損傷したお車は、購入してから1年10か月ほどしか経っていなかったため、評価損を請求することにしました。

車両の損害はいくら補償されますか?

簡単に説明すると、修理費と事故当時の車両の時価額のどちらか低い方が補償されます。なるべく事故がなかった時の状態に戻すことを補償の目的とすると、修理費の方が低ければ修理をすれば事故当時の状態に戻る、時価額の方が低ければ修理をしなくても中古車を購入すれば事故当時の状態に戻るということになるからです。

評価損とは何ですか?

評価損とは、事故当時の車両価格と修理後の車両価格との差額とされています。すなわち、修理をしても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合に認められます。
事故歴があるとして商品価値の下落が見込まれる場合の評価損は、そもそも損害として認められるかという点で学説や裁判例も分かれているところではありますが、一定の条件の下で認められている裁判例があります。
評価損が認められる場合は、修理費の何%という形で認められることが多いです。

どのような車両に評価損が認められますか?

『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準2002年版』によると、「これまでの判例の傾向からすれば、外国車又は国産人気車種で初度登録から5年(走行距離で6万キロメートル程度)以上、国産車では3年以上(走行距離で4万キロメートル程度)を経過すると、評価損が認められにくい傾向がある」とされています。

どのように立証するのですか?

実務では、一般財団法人日本自動車査定協会(以下「査定協会」といいます。)に事故減価額証明書を発行してもらい、それを根拠に評価損を請求します。査定協会の査定士が車両のある所まで出張して査定することもできますし、被害者が査定協会の事業所まで車両を持ち込んで査定をすることもできます。

結果はどうなりましたか?

Kさんの車両は、購入してから1年10か月程度の国産車で、走行距離が3万2000キロメートル程度であったため、評価損の請求可能性があると判断し、査定協会に減価額の査定を依頼しました。今回は持ち込み査定で依頼しました。事業所に持ち込んでから事故減価額証明書が手元に届くまで1週間程度でした。減価額は33万2000円で、修理費の約30%でした。
当初、相手方保険会社は、評価損は認めないとする立場でしたが、交渉の結果、評価損について、修理費の約20%である22万6508円で示談をすることができました。

おわりに

相手方保険会社は評価損を認めない傾向が強いですが、損傷箇所や年式等によっては本件のように請求できる場合もあるため、適正な対応かどうかご不安がある場合はお気軽に弁護士へご相談ください。

【津田沼法律事務所】
所属弁護士:永井 龍(ながい りゅう)

プロフィール
立教大学法学部卒業、法政大学法科大学院修了。弁護士登録以降、東京都内の弁護士事務所で一般民事や家事事件などの分野で執務。現在は津田沼事務所で活動。趣味は写真撮影、好きな言葉は「正直」。

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