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2023年9月号: 物流業界での働き方改善によって起こる2024年問題

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物流業界での働き方改善によって起こる2024年問題

今回は、2024年4月1日から、建設事業及び自動車運転者にも適用される時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)についてQ&A形式で取り上げます。

建設事業及び自動車運転者の時間外労働時間は、どのように規制されるのでしょうか

A 2019年4月以降、時間外労働の上限が罰則付きで規制されるようになりました。現在、建設事業及び自動車運転者には規制が猶予されていますが、2024年4月からは原則として月45時間、年360時間の時間外労働の上限規制が適用され、臨時的な特別な事情がなければ、これを超えることができなくなります。

臨時的な特別な事情があり、労使で特別条項付36協定を締結した場合、時間外労働の上限はどういった内容になるのでしょうか

A 労使が特別条項付36協定を締結する場合でも、厳格な上限規制が設けられ、時間外労働は年720時間の上限となります。
また、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2~6か月平均は全て1か月あたり80時間以内とする必要があります。さらに、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月が限度であるなど、細かく上限時間が定められています。
自動車運転者については、時間外労働時間は年960時間の上限となります。なお、自動車運転者には月100時間未満、2~6か月平均は全て1か月あたり80時間以内とする一般則の制限は適用されません。そのため、例えば、ある月に時間外労働が100時間に達したとしても他の月の時間外労働時間を削減するなどして年960時間を超えなければよいとされています。
以上のように、2024年4月1日からは、建設事業及び自動車運転者にも、時間外労働の上限規制が適用されることになり、罰則も設けられていますので、労働環境の見直しが迫られています。

特別条項付36協定にあたり、企業としてどういった点に注意が必要でしょうか

A これまでの36協定では、時間外労働の上限に法的拘束力がなく、実質的には無制限に時間外労働が認められていました。
しかしながら、今後は、特別条項付36協定を締結した場合でも、罰則付きで上限が設けられます。そして、特別条項付36協定はあくまで、繁忙期や緊急時に例外的に労働時間の上限を引き上げることができるものです。すなわち、「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」(労基法第36条5項)に限られます。こうした、限度時間を超えた労働の必要性は、特別条項を適用する業務の種類ごとに、具体的な理由を記載しなければならなくなります。
以上のように、36協定の締結にあたっては、特別条項を適用するための条件が厳しくなり、具体的な理由の記載が必要となります。そのためには、過去に時間外労働が発生していた理由を明確化しておき、各業務における限度時間を超えた時間外労働が必要となる理由の記載に対応できるように準備しておくことが望ましいです。

【船橋法律事務所】
所属弁護士:神津 竜平(こうづ りゅうへい)

プロフィール
國學院大学法学部卒業、明治大学法科大学院修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に、ベストな解決は如何なるものかを考え抜き、具体的に方針や見通しをお伝えした上で、ベストな解決を追求すべく活動を行う。趣味は旅行、釣り、好きな言葉は「人生一度きり」。

交通事故解決事例「壊れた車両に関する賠償について」

1 事案の概要

Ⅹさんが片側一車線の道路をバイクで走行中、対向車線を走行してきた相手方車両がセンターラインを越えてⅩさんのバイクの側面に接触しました。Ⅹさんはバイクを修理業者へ持っていきましたが、修理業者からは修理ができない状態であると言われました。なお、Ⅹさんは、バイクの購入時に複数のオプション装備を付けていました。

2 車両の全損と請求可能額

修理が不可能である場合、または修理は可能であるが修理費用が車両時価と買替諸費用の合計額を上回る場合には、車両は全損と評価されます。前者の場合は物理的全損、後者の場合は経済的全損と呼び分けられます。車両が全損となった場合、相手方に請求できる金額は車両の時価額までです。経済的全損の場合、修理自体は可能ですが、修理費用全額を相手方に請求することはできません。

3 時価額の調べ方

では、全損となった場合に請求できる時価額とは、どのように決められるのでしょうか。主に、次のような方法があります。
まず、通称レッドブックと呼ばれる、オートガイド社が出版する「オートガイド自動車価格月報」を基準とする方法です。
レッドブックには、中古車の小売価格などが車種、型式ごとに掲載されています。統一的な基準として信用性が高いとされ、保険会社も弁護士も必ず参照する資料です。
また、実際の中古車情報をインターネットで調査し、一定数のデータの平均をとる、といった方法も考えられます。レッドブックよりも高い金額となる場合もありますが、一般に保険会社は、より信用性が高いとしてレッドブックの金額を優先します。この方法によって算出した金額での支払いを求めるには、この金額の方がレッドブックよりも適正な金額であることを説明して説得する必要があります。

4 本件の経過

Ⅹさんのバイクは、修理が不可能であるとして物理的全損とされました。相手方保険会社は、バイクの時価額として、レッドブックを根拠に約140万円を提示してきました。しかし、Ⅹさんが付けたオプション装備を考慮すれば、時価額はもっと高く評価されるべきと考えられました。
そこで、Ⅹさんのバイクと同車種、同型式で、Ⅹさんが付けたものと同様のオプションが付いたバイクの中古車市場をインターネットで調査したところ、レッドブックの額を大きく上回る結果となりました。弁護士から相手方保険会社に調査報告を行うと同時に、レッドブックの金額はⅩさんのバイクに付いたオプションが一切考慮されておらず、適正な金額といえない旨を丁寧に説明したところ、最終的に約200万円がバイクの時価額として支払われることとなりました。

5 おわりに

交通事故と聞くと、怪我の治療などお体に関する問題に意識が向きがちですが、壊れた車両に関する賠償についても法律的な問題が多くございます。ご不明な点がございましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。

【柏法律事務所】
所属弁護士:宇野 浩亮(うの こうすけ)

プロフィール
一橋大学法学部法律学科卒業、一橋大学法科大学院修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。現在は柏法律事務所に所属し、主に、交通事故、労働事件、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行い、ご依頼者様とのコミュニケーションを大切にし、信頼される関係をしっかりと構築しながら解決に向けた活動を行う。好きな言葉は「一期一会」。

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