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2024年1月号: 法改正「労働条件明示のルール変更」

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法改正「労働条件明示のルール変更」

労働基準法施行規則等の改正により、令和6年4月1日から、求人募集を行うときや、労働者を新たに雇用するときに明示すべき事項が変更されます。具体的には、以下の対応が必要となります。

1 就業場所・業務の変更の範囲の明示(すべての労働者が対象)

全ての労働契約の締結時(有期労働契約の場合は、更新時)に、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。すなわち、将来的に転勤や配置転換の可能性がある場合には、その範囲を明示しなければなりません。

2 有期契約労働者に対する明示事項

  1. 更新上限の明示
    有期労働契約の場合、当初の契約締結時と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。
  2. 無期転換申込機会の明示・無期転換後の労働条件の明示
    有期雇用の労働者については、同一の使用者との間で有期労働契約が5年を超えて更新された場合、無期転換の申込権が発生します。この「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要になります。たとえば、契約期間が3年の労働者の場合、1回目の更新から2回目の更新までの間に無期転換申込権が発生しますので、1回目の更新の時点で、無期転換申込権について明示する必要があります。
    また、このとき、無期労働契約に転換した場合の労働条件も、あわせて明示する必要があります。

3 求人募集の際の明示事項

今回の労働基準法施行規則の改正にあわせ、職業安定法施行規則も改正されています。これにより、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際に明示しなければならない事項が追加されています。
まず、すべての労働者が対象になるものとして、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲(上記1)は、求人段階で明示しなければなりません。これに加え、有期労働契約の場合には、通算契約期間、更新回数の上限等、契約を更新する場合の基準も明示しなければならないとされています。
これらの事項は、やむを得ない場合を除き、ハローワーク等への求人の申込みや自社ウェブサイトでの募集、求人広告の掲載を行う時点で明示しなければならないとされているため、注意が必要です。

4 改正法への対応は弁護士にご相談ください

以上のルールは、改正法が適用される令和6年4月1日以降に締結する雇用契約が対象になりますので、すでに雇用している労働者に対しては、改めて労働条件を明示する必要はありません。もっとも、すでに雇用している労働者についても労働条件の理解を深める機会となりますので、このタイミングで再度、労働条件を明示することが望ましいと考えられます。この機会に、改正法に対応した労働条件通知書の作成や就業規則の見直しをお考えの事業者様は、ぜひ一度、リーガルプラスの弁護士にご相談ください。

【上野法律事務所】
所属弁護士:小湊 敬祐(こみなと けいすけ)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院法務研究科修了。弁護士登録後は主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に、「法律は人のためにある」という言葉を胸に、多くの方の助けになることを目指して活動を行う。趣味は自然の中でのんびりすること。好きな言葉は「学問救世」。

交通事故解決事例

1 事案の概要

Ⅹさんが交差点を赤信号で停止していたところ、後方から走行してきた相手方車両がⅩさんの車に追突しました。Ⅹさんは、自営のタクシードライバーであり、本件事故はⅩさんの業務中に発生しました。本件事故により、Ⅹさんは、業務で使用する自身のタクシーが損傷し、一定期間業務を遂行することができなくなりました。

2 休車損害の基本的な考え方

タクシーや貨物自動車などの業務用車両が交通事故によって損傷した場合、修理や買替完了までに当該車両が使用できず、本来得られたはずの利益が得られなかった、という事態が考えられます。この損害のことを、休車損害といいます。怪我によって仕事ができなかった場合の損害を休業損害といいますが、休車損害は、車両の損傷によって仕事ができなかった場合の損害という点で、休業損害とパラレルに考えることができます。
休車損害の計算は、基本的には、事故で利用できなくなった車両の日額売上から、事故で利用しなかったことによって支出を免れた経費を減じ、利用できなかった日数を乗じる、という方法で行います。しかし、各々の金額の抽出にあたって参照すべき資料としては、管理システム上のデータや業務日報、確定申告書類など様々なものが考えられ、実際の計算方法や立証方法は事案ごとに大きく異なります。

3 本件の経過

Ⅹさんは、本件事故直後、乗車していた車が業務用タクシーであり、その損傷によって休車損害が発生していることを相手方保険会社へ伝えました。これに対して、相手方保険会社は、休車損害として一定の支払いを行う姿勢を見せましたが、その計算方法には不透明な部分が多くありました。Ⅹさんは、相手方保険会社が提示してきた金額が妥当なものか、当事務所へご相談にいらっしゃいました。
Ⅹさんから、確定申告書など収支に関する資料の提供を受け、内容を分析したところ、Ⅹさんの事故前年度の収支状況を考慮すれば、本件における休車損害はもっと高く評価されるべきと考えられました。そこで、弁護士から相手方保険会社に、Ⅹさんから提供を受けた資料の一部を添付して計算書を送り、弁護士による計算方法を丁寧に説明しました。交渉の結果、Ⅹさんの休車損害として、当初相手方保険会社から提案されていた金額のおよそ2倍の金額を回収することができました。

4 おわりに

交通事故においては、怪我の治療などお体に関する問題だけでなく、損傷した車両に関する賠償についても法律的な問題が多く発生します。ご不明な点がございましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。

【柏法律事務所】
所属弁護士:宇野 浩亮(うの こうすけ)

プロフィール
一橋大学法学部法律学科卒業、一橋大学法科大学院修了。弁護士登録後は柏法律事務所に所属し、主に、交通事故、労働事件、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行い、ご依頼者様とのコミュニケーションを大切にし、信頼される関係をしっかりと構築しながら解決に向けた活動を行う。好きな言葉は「一期一会」。

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