ニュースレター

2024年3月号: 障害者差別解消法により、民間事業者の合理的配慮の提供が法的義務となります

L+PRESS 2024年3月 PDFで見る

障害者差別解消法により、民間事業者の合理的配慮の提供が法的義務となります

障害者差別解消法では、国・地方公共団体・民間の事業者のすべてが障害を理由として不当な差別的取扱いをすることが禁止されています。そして、令和6年4月1日からは、民間の事業者の「努力義務」とされていた合理的配慮の提供が、国・地方公共団体等と同様に「義務」となります。

対象となる事業者は、個人・法人を問いません(個人事業主も対象となります)。また、目的の営利・非営利も問いませんので、お店や会社だけでなく、ボランティア活動を行うグループなども対象となります。

具体的には、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、過重の負担にならない範囲で、障害者の性別・年齢、障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないとされています。
障害者からの意思の表明は、言語(手話を含む)、点字、筆談、実物を示すことや身振りなどのサインによる合図、触覚など様々な手段があります。また、障害者本人が意思の表明をできない場合もありますので、家族や介助者などのコミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行うものも含みます。

合理的な配慮の例としては、肢体不自由の場合は列に並んで順番を待つことが難しいときには列から外れて順番を待てるようにする、視覚障害の場合には契約内容の読み上げやデータによる提供の求めに応じるといったものが考えられます。

障害者に対する配慮は、事業者の過重な負担とならない範囲で行うものとされていますが、過重な負担か否かは、具体的な場面での個別の判断となります。仮に過剰な負担になると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましいとされています。
事業者は、障害者から意思の表明があった場合に合理的配慮の提供義務を負うものですが、事前の準備がなければ実際に意思の表明を受けたときに対応に苦慮することになります。また、従業員等が対応をする場面が多いと考えられますので、従業員等に予め周知しておくことや同様の合理的配慮提供の要望があった際にスムーズに対応できるように内部で事例を共有し、蓄積していくことも必要です。内閣府ホームページには、「合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)」があり、障害の種別や生活の場面から合理的配慮の提供の例が挙げられており、参考となります。

合理的配慮を提供しなかった場合、直ちに罰則が課されるわけではありませんが、主務大臣が事業者に対して報告を求め、助言・指導・勧告を行うことができ、報告を行わず、又は虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料が課されることがあります。

【かしま法律事務所】
所属弁護士:齋藤 碧(さいとう みどり)

プロフィール
山形大学人文学部総合政策科学科卒業、大阪大学大学院高等司法研究科修了。主に、交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に、法的な問題でお困りの方の手助けができるよう活動を行う。趣味は植物を育てること、読書、音楽鑑賞、好きな言葉は「地に足をつける」。

交通事故解決事例

事案の概要
Aさんは、対向車線沿いの店舗駐車場に入るため、対向車の通行が落ち着くまで停車し、進行のタイミングを見計らっていたところ、前方不注視の自動車に追突されてしまいました。

1 評価損

「評価損」とは、車両の修理が可能であり修理をした場合で、修理してもなお、機能や外観に欠陥が残っていることや、車両の骨格部分の修理が必要になったこと(修復歴)により評価が下落したことによる損害のことをいいます。車両価値の下落が認められる場合に、その価額下落分が損害として認められていますが、一般的には修理代金の1割から3割程度の金額が認められることが多いとされています。
しかし、評価損は、車両の修理をすると当然に認められるものではなく、一般的には、外国車・国産の人気車種では初度登録から5年(走行距離6万km)、国産車では3年(走行距離4万km)を超えると評価損が認められにくいとされています。
また、評価損はあくまで自動車自体の損害であるため、原則として車両の所有者のみが請求できます。

2 解決までの経緯

Aさんが事故に遭った際に乗られていた自動車は、新車で購入してから2か月しか経っていない国産車でした。また、事故により、車両後方の骨格部分に損傷が生じており、修理をしました。そのため、評価損が認められるべき条件は満たしていました。
しかし、Aさんはローンを組んで自動車を購入しており、所有者は自動車販売店になっていました。ローンを組んで自動車を購入される場合には、所有権留保といって、ローンの支払が終了するまでは、所有者は自動車販売店やローン会社で、購入者は使用者となっていることも多いのですが、Aさんも同様でした。
しかし、Aさんとしては、購入後すぐの愛車に修復歴がついてしまったということで、評価損の取得を希望されており、当事務所にご依頼いただきました。
そこで、本来であれば所有者ではないAさんから評価損の請求はできないところ、所有者である自動車販売店と交渉し、評価損を請求する権利を、所有者である自動車販売店から使用者であるAさんに譲ってもらうことができました。
これにより、Aさんは評価損として修理代の約26%の15万円を取得することができました。

3 おわりに

Aさんのように、所有者が自動車販売店やローン会社になっている車をご使用の方も多いかと思います。相手方保険会社からの提案が適正なものであるかご不安がある方は、是非一度当事務所にご相談ください。

【成田法律事務所】
所属弁護士:常世 紗雪(とこよ さき)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、一橋大学法科大学院修了。弁護士登録後は成田法律事務所に所属し、主に、交通事故、労働事件、離婚・不貞問題を中心に活動を行う。コミュニケーションを疎かにせず、ご依頼者様に心からご納得・ご理解いただけるように説明することを心がけている。好きな言葉は「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む」。

一覧へ戻る

0120-13-4895

お問合せ