2025年5月号: 父母の離婚後の子の養育に関する見直し
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父母の離婚後の子の養育に関する見直し
1 はじめに
2024年に成立した民法等の一部を改正する法律によって、父母が離婚をした後も子どもの利益を確保することを目的として、子どもを養育する親の責務が明確化されるとともに、親権・養育費・親子交流などに関するルールも見直されました。
この法律は、2026年5月までに施行されることになっており、施行まで1年を切りました。
以下、主な改正点をピックアップしていきます。
2 親の責務等に関するルールの明確化
父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子どもを養育する責務を負うことが明確化されました。具体的には、子の心身の健全な発達を図るため子の人格を尊重すること、子の利益のために父母が互いに人格を尊重し協力をすることなどが親の責務として定められました。
また、親権が子の利益のために行使されなければならないものであることも明確化されました。
3 親権に関するルールの見直し
これまでは、父母が離婚した場合は、親権者を父又は母のいずれか一方と定めるとする単独親権という制度が取られていました。しかし、今回の改正法では、親権者を父母の双方又は一方と定めるとされ、父母の離婚後も共同親権とする選択肢が加えられました。
共同親権の導入については、2024年6月号のニュースレターでも取り上げておりますので、詳細はそちらをご参照いただければと思います。
4 養育費の支払確保に向けた見直し
これまでは、同居親と別居親の間で養育費の支払いに関する取決めをしていたとしても、養育費の支払いを怠ったときに別居親の財産を差し押さえるためには、債務名義(公正証書や調停調書など)が必要でした。しかし、今回の改正法では、養育費債権に先取特権(優先権)が付与されることになり、債務名義がなくても財産を差押えすることが可能になりました。
これにより、養育費の取決めに基づく民事執行手続(預金口座や給与の差押えなど)が容易になり、養育費の取決めの実効性が向上されることが期待されています。
5 安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
調停や審判などの家庭裁判所の手続において親子交流を試行的に行うこと(試行的実施)に関する制度が整備されました。
また、婚姻中の父母が別居している場合の親子交流に関する制度も整備されました。
そして、これまでは、面会交流といえば父母と子どもの交流とされていましたが、今回の改正法では、父母以外の親族(祖父母など)と子どもとの交流に関する制度も整備されました。
6 おわりに
ここでピックアップしたものは改正法の一部にすぎず、この他にも多くの改正がなされています。
現行法と改正法の違いや改正法が施行された後の運用などについて気になる方は、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。
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【船橋法律事務所】
所属弁護士:西池 峻矢(にしいけ しゅんや)- プロフィール
- 早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。弁護士登録以降、「自身が勉強した法律を使って、法的な紛争で苦しんでいる人々を助けてあげたい」という気持ちを胸に、交通事故や一般民事、家事事件などの分野で活動を行う。趣味は野球やラグビーなどのスポーツ観戦、好きな言葉は「意志あるところに道は開ける」。
交通事故解決事例
1 ご相談時の状況
ご依頼者としては、怪我に関しても上記過失割合で示談できるものと考えていました。しかし、相手方保険会社からは、物的損害での過失割合はあくまで早期解決のためのものであり、怪我に関しては別途協議することを前提としていた、との話をされ、20%:80%での過失割合を提案されることとなりました。このような状況にご依頼者としては納得ができずご相談に来られました。
2 過失割合について
一般的に、過失割合を判断するにあたって、まずは『別冊判例タイムズNO.38』(以下、「判タ」といいます。)を参照することとなります。判タとは、過去の裁判例等から典型的な交通事故を類型化し、事故態様に応じて一応の目安となる基本的な過失割合を記載したものです。また、事故態様によっては、基本的な過失割合を左右する修正要素なども記載されています。そのため、典型的な事故については、判タの基本的な過失割合や修正要素をもとに、事案に応じて過失割合を決めていきます。
3 主な活動内容
本件においても判タを参照したところ、基本的な過失割合としては、相手方保険会社の提示する通りの過失割合になりそうでした。しかし、ご依頼者から事故当時の状況をお聞きすると、事故現場は大きな交差点であり、ご依頼者が先に交差点に入った後に、相手方運転車両が交差点に進入して右折を開始し、ご依頼者の車両の横から衝突したとのお話でした。
このような状況から、当職は、相手方保険会社に対し、物損資料などを踏まえながら、既に交差点に入っていたご依頼者には回避可能性がない、ないしは過失割合に修正が認められる旨の主張をしていきました。そうしたところ、最終的には10%:90%で示談することとなり、ご依頼者は当初の提示額より多く賠償金を得ることができました。
4 最後に
今回紹介した事案では、過失割合が主な争点となりました。過失割合は事故態様に応じて判断されることになるため、当時の事故態様が分かるような客観的資料、例えば、ドライブレコーダーの映像や刑事事件の記録等があれば、より有利な提示や解決がしやすくなります。
弊所は、交通事故事件を多く取り扱っており、来所相談だけでなく電話やウェブを通じたオンラインでのご相談も可能です。お困りの際はお気軽に弊所までお問い合わせください。
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【かしま法律事務所】
所属弁護士:佐々木 英人(ささき ひでと)- プロフィール
- 山形大学人文学部卒業、中央大学法科大学院法務研究科修了。弁護士登録後はかしま法律事務所に所属し、主に、交通事故、労働事件、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。ご依頼者様にしっかり寄り添い、少しでも早く不安や不満が解消されるよう迅速な活動を心がけている。好きな言葉は「雨垂れ石を穿うがつ」。