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2026年1月号: 新しい譲渡担保・所有権留保法制

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新しい譲渡担保・所有権留保法制

1 はじめに

かねてから、不動産以外の物に担保権を設定する方法として、法律上明文の規定はなかったものの、実務上「譲渡担保」「集合動産(集合債権)譲渡担保」「所有権留保」という制度が用いられてきました。これについて、ルール形成が判例にゆだねられていたこと、判例がなくルールが不明確な論点も多かったことなどもあり、明文による規定の必要性が以前から指摘されていました。
これを受けて、令和7年6月6日、「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」が公布され、公布日から2年6カ月を超えない範囲で政令で定める日から施行されることとなりました。あわせて、関係法令の整備法も同時に定められています。

2 譲渡担保契約の効力

譲渡担保契約については、動産、債権、その他譲渡可能な財産(不動産等を除く)を目的として設定可能であることが明文化されました。あわせて、譲渡担保権者の権限(優先弁済権、物上代位、物権的請求権)、譲渡担保権設定者の権限(後順位の譲渡担保権設定、目的動産の使用収益、物権的請求権)、根譲渡担保権に関する制度、所有権留保契約の規律も定められました。

3 集合動産、集合債権を目的とする譲渡担保権

一定の範囲に属する多数の動産や債権を対象とする集合動産譲渡担保、集合債権譲渡担保についても、その特定方法や設定後に含まれる動産や債権にも効力が及ぶことや対抗要件具備が明文化されました。また、設定者は原則としてその範囲に含まれる動産の処分や債権の取立てができる一方、全体の価値を維持する義務を負うことも明らかにされました。

4 他の担保権との優劣関係

他の譲渡担保権や先取特権、質権と競合した場合は、原則として対抗要件具備の先後によって順位が定まることが明文化されました。例外として、占有改定は外部からの認識が難しいため対抗力が劣後すること、目的動産と牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権(牽連性担保権)について優先的に取り扱うことも定められました。

5 実行に関する規律

譲渡担保権の実行に関しても新たに規律が定められました。かねてから認められていた私的実行である帰属清算方式(目的物を担保権者が取得する方式)、処分清算方式(目的財産を第三者に譲渡して代金を弁済に充てる方式)に関する規律が定められたほか、あらたに動産譲渡担保権実行のための裁判手続(各種の保全処分、実行前の引渡命令、実行終了後の引渡命令)が創設されました。

6 倒産手続における取扱い

譲渡担保権設定者が倒産した場合、倒産手続において譲渡担保権者が担保権者として扱われることが明文化されました。あわせて、担保権実行手続中止命令の見直し(実行開始前の実行禁止命令、担保価値維持などの条件設定)、担保権実行手続取消命令の創設、集合動産・集合債権譲渡担保設定者の倒産手続開始後に取得する動産や債権に原則として譲渡担保権が及ばないことや否認対象行為についても定められました。

若松 俊樹(わかまつ としき)
【上野法律事務所】
所属弁護士:若松 俊樹(わかまつ としき)

プロフィール
東京大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了後、弁護士登録以降東京で6年、茨城県水戸市で6年半強ほど一般民事や企業法務などの分野で執務。現在は上野事務所で、交通事故、労務事件などを中心に活動を行う。趣味は読書や音楽鑑賞、好きな言葉は「鬼手仏心」、「神は細部に宿る」。

交通事故解決事例

事案の概要
Aさんは、渋滞により停車していたところ、後方から来た車両に追突されてしまい、頚椎捻挫等の怪我を負ってしまいました。
その後、病院の医師の指示に従い、約4カ月に渡り通院していましたが、実通院日数(通院回数)は6日でした。
相手方保険会社より、賠償金額の提案がありましたが、その内容が慰謝料10万円というものだったので、Aさんはご相談に来られました。

1 傷害慰謝料の計算と通院頻度について

傷害慰謝料の計算基準は主に3つあるといわれています。
1つ目は自賠責保険の基準であり、最低限の基準となっています。
2つ目は、弁護士(裁判所)基準と呼ばれるもので、基本的に弁護士にご依頼いただいた際には、この基準で計算します。
3つ目は任意保険の基準とされるもので、自賠責保険の基準と弁護士(裁判所)基準の間の基準といわれていますが、実態は公表されていません。
また、弁護士(裁判所)基準で慰謝料を計算する場合には、通院期間で慰謝料を計算します。
そのため、実通院日数の多寡ではなく、通院期間の長短が問題となります。
もっとも、実通院日数が極端に少ない場合等には、通院期間を実通院日数の3倍から3.5倍と計算するのが妥当な場合もありますので、頸椎捻挫・腰椎捻挫等の場合には、週に2、3回程度、整形外科への通院をお勧めいたします。

2 解決までの経緯

Aさんが最初に受け取った提案の内容は、自賠責保険の金額(4300円×6日×2倍=5万1600円)に多少の増額をした提案でした。
そこで、弁護士(裁判所)基準で約4カ月の慰謝料を計算しなおすと、慰謝料のみで約62万円となりましたので、この金額で相手方との交渉を始めました。
相手方は、実通院日数が6日であり、頻度としても最初の1カ月以外は月に1回の通院だったので、「通院が長期不規則であり、実通院日数の3倍で計算すべきである」と主張してきました。
弁護士が慰謝料の算定の際に参考にする「交通事故損害額算定基準―実務運用と解説―」によれば、「長期・不規則」な通院とは「1年以上にわたりかつ通院頻度が極めて低く1カ月に2~3回程度の割合にも達しない場合」を指すとされています。
本件Aさんの場合には、「1年以上」の治療ではなかったため、その点を強く主張し、早期解決のため、当初の約62万円の7割である約43万円で合意できました。

3 おわりに

Aさんのように、病院の指示に従って通院をされている場合、どうしても実通院日数が少なくなってしまう場合があります。
もし事故に遭われた場合、お早めにご相談いただけますと通院についてのご助言が可能な場合もございますので、お気軽にご相談ください。
また、相手方保険会社からの賠償の提案が適正なものであるかご不安がある方も、是非一度、当事務所にご相談ください。

常世 紗雪(とこよ さき)
【東京法律事務所】
所属弁護士:常世 紗雪(とこよ さき)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、一橋大学法科大学院修了。弁護士登録後は主に、交通事故、労働事件、離婚・不貞問題を中心に活動を行う。コミュニケーションを疎かにせず、ご依頼者様に心からご納得・ご理解いただけるように説明することを心がけている。好きな言葉は「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む」。

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