2026年6月号: 遺産分割の「10年の壁」とは?特別受益・寄与分の新ルールを解説
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遺産分割の「10年の壁」とは?特別受益・寄与分の新ルールを解説
1.遺産分割における「特別受益」と「寄与分」の10年制限
相続が発生後に、様々な理由から遺産分割協議に着手できないケースがあります。相続発生からずいぶん時間が経ってからのご相談を受けることもありますが、従前は、遺産分割に法的な時間制限はありませんでした。
しかし、2023(令和5)年4月1日に施行された改正民法により、遺産分割のルールに重大な変更が生じました。具体的には、「特別受益」や「寄与分」を主張できる期間に「相続開始から10年」という制限が設けられました。
2.遺産分割における「特別受益」と「寄与分」とは
遺産分割は、民法で定められた「法定相続分」を基準に行われるのが原則です。一方で、法定相続分で分割すると不公平が生じるような場合に、その個別事情を反映させて、相続人間の実質的な公平を図る仕組みが「特別受益」や「寄与分」です。「特別受益」とは、例えば、一部の相続人が被相続人(亡くなった方)から生前に多額の贈与を受けている場合に該当し得ます。贈与された財産を遺産に組み戻したうえで、遺産の分配を検討することになります。
「寄与分」とは、例えば、無償で家業の手伝いをして被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合に該当し得ます。寄与した財産分を遺産から差し引いて遺産の分配を検討することになります。
3.相続開始から10年経過による主張の制限
2023(令和5)年の法改正により、相続開始から10年を経過した後に開始する遺産分割においては、原則として特別受益や寄与分の主張ができなくなり、画一的な法定相続分(または指定相続分)で分割されることになります。
なお、この法律の対象となる相続は、法律の施行日より前に発生した相続に対しても適用されるので注意が必要です。ただし、施行日の時点で既に10年が経過している場合や、間もなく10年を迎える場合については、2028(令和10)年3月31日までの猶予期間が設けられています。
協議がなかなかまとまらなくても、相続開始から10年が経過する前に家庭裁判所に対して遺産分割請求(調停や審判の申立て)を行っていた場合には、10年経過後も特別受益や寄与分の主張が可能です。
4.最後に
長年遺産分割に着手できていないけれど特別受益や寄与分がありそうな場合には、まずは、遺産分割を開始いただくことをお勧めします。10年が間近となっている場合には、早急に遺産分割調停を裁判所に申し立てていただく必要があります。
遺産分割の進め方がわからない場合、当事者間での協議が円滑に進まない場合、もうすぐ10年経ちそうだというような場合には、一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。お気軽にご相談ください。

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【渋谷法律事務所】
所属弁護士:藥師寺 孝亮(やくしじ こうすけ)- プロフィール
- 早稲田大学商学部卒業、日本大学法科大学院修了。民間企業に勤務していたが、一念発起して弁護士を目指す。現在は渋谷法律事務所に所属し、主に相続を中心に活動を行う。「ご相談者様・ご依頼者様に笑顔を取り戻してもらいたい。」という思いを大切に、少しでも良い未来に向かっていただけるよう、知恵を絞り、行動するよう心がけています。好きな言葉は「人事を尽くして天命を待つ」。
相続解決事例「不動産多数の遺産分割事件」
相手方 Yさん、Zさん
被相続人 Aさん
被相続人の夫 Bさん
解決方法 交渉
解決までに要した期間 11か月
本件の事実関係
Xさん、Yさん(妹)、Zさん(弟)は、Aさん(母)とBさん(父)の子でした。
Bさんは多数の不動産を所有しており、その中にはマンションやアパートが数棟含まれていました。Bさんが亡くなった際、そのほとんどをAさんとZさんで相続しました。
その後、Aさんも亡くなり、Zさんは、長男である自分が遺産の全てを相続すべきだと主張し、全く話し合いができませんでした。このため、Xさんは当事務所に相談に来られ、私が依頼を受けることとなりました。
解決までの流れ
Yさんも、Xさんと考え方はほとんど同じでしたが、Yさんは別の弁護士に本件を依頼していました。その後、Yさんとは全て協力し合って手続きを進めましたので、Yさんに関する記載は省略します。
Xさんとしては、法定相続分どおりでなくても構わないが、それなりの金額を相続したいとのことでした。Zさんが遺産のほとんどを取得しようとしていたため、同人の説得に時間がかかりましたが、最終的には、Zさんが全ての遺産を相続し、Xさんには法定相続分の3分の2ほどの代償金を支払うという内容で解決しました。
遺産分割協議の進め方自体、特筆すべきものはありませんが、遺産が高額である場合、税金の問題が重要となります。
Aさんは、1億円近い賃料収入があったため、所得税の申告が必要でした。Aさんが亡くなったことで、準確定申告が必要となるのですが、こちらは遺産を管理していたZさんが、勝手に進めてしまいました。Aさんが亡くなった後の賃料は、遺産分割協議を経ることなく、法定相続分で分割となるのですが、Zさんが資料のほとんどを開示してくれなかったため、推定計算で確定申告を行いました。こちらについては、2年ほどで遺産分割協議が成立したため、1年分の申告で済ませることができました。
Zさんとの賃料収入の清算は、Xさんの申告額と同額とし、修正申告等、追加の手続きが不要となるようにしました。
また、Aさんが亡くなった後、10か月以内に相続税申告が必要となります。遺産分割前であっても、相続税を支払わなければなりません。遺産が相当な額であったため、一時的に数千万円もの納税が必要でしたが、延滞税等が高額となるため、Xさんは、期限内に納付せざるを得ませんでした。遺産分割協議成立後、修正申告を行い、追加で納税をしました。
遺産分割協議成立前は、1円も取得していない場合でも、納税しなければなりません。一歩間違えれば、脱税となり、税務署とトラブルになったり、追加の納税が必要となります。賃料収入については、賃料を管理している相続人に請求する手続きが必要となってきますので、相続に詳しい税理士にも忘れられていることが多々あります。相続に詳しい弁護士であれば、手続きの全体像を把握しておりますので、関連士業の業務にも踏み込んだ手続きの案内(関連士業の業務については、別途関連士業へのご依頼が必要です。)が可能です。複雑な相続事件であるとか、様々な種類の資産を有している方の終活においては、弁護士への相談もご検討ください。

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【船橋法律事務所】
所属弁護士:今井 浩統(いまい ひろのり)- プロフィール
- 東北大学法学部卒業、早稲田大学法務研究科修了。弁護士登録後は主に、交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に、多くの方の法律トラブルをしっかり手助けできるよう活動を行う。趣味はソフトテニス、ゴルフ、アコースティックギター、ドライブ、好きな言葉は「どんなことでも楽しまなくては損」。


