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2025年11月号: 労働時間管理について

L+PRESS 2025年11月 PDFで見る

労働時間管理について

先日、千葉県経営者協会主催の労働法フォーラムで労働時間管理についてお話をしてきました。労働法フォーラムは、労働法に関する講演等を朝から夕方まで行うものです。今年は、弊所を含め3つの事務所から登壇者が出て、各2時間ずつ別のテーマでご報告をしています。気になる方がいらっしゃいましたら、千葉県経営者協会までお問い合わせください。

働き方改革と言われてすでに何年も経ちましたが、いまだに長時間労働が問題となっています。
そのため、国は長時間労働により労働者が健康を害することを避けるべく、様々な規制を設けてこれを改善しようとしています。他方で、最近高市首相が、労働時間の規制緩和を検討という報道がありました。長時間労働を避けるべきという昨今の流れに逆行するのではないかなどと批判的な言説も多くあり、労働時間法制がどのように変わっていくのか、不明確な状況です。

長時間労働を回避するため、まずは労働時間をきちんと把握しなければなりません。現在は、タイムカードを利用している企業がほとんどだと思いますが、テレワーク・リモートワークも増えてきており、タイムカードだけで管理をすることはできなくなっています。そこで、社外からアクセスできる勤怠アプリ等の導入も考えなければなりません。

また、テレワーク・リモートワークでは労働時間の把握が難しい(労働時間でない家事育児といった時間との区別が難しい)だけでなく、長時間労働になりがちともいわれています。そこで、メール送信の抑制や、システムへのアクセス制限、長時間労働を把握した際の労働者への注意喚起などが必要になってきます。
このようなシステムの導入や、運用の改善をすることなく、安易にテレワーク・リモートワークを導入し、長時間労働による各種弊害(割増賃金の支払い、労災等)が引き起こされることがないよう、注意していく必要があります。

最後に、労働法の改正が検討されていますのでいくつかご紹介します。

  1. 時間外・休日労働実態の公表
    労働者が、労働時間や休暇の取りやすさといった情報を得て 就職・転職先を選ぶようにすべく、時間外・休日労働の実態について、義務的な情報開示について検討されています。これにより企業間の競争が生じ、労働条件の改善も期待できる、ということです。
  2. 13日を超える連続勤務の禁止
    現在は4週の間に4日休日を与えれば良いとされていますが、2週間以上の連続勤務が心身に与える影響の大きさに鑑み、13日を超えて連続した勤務をさせてはならないという規定の新設が検討されています。
  3. 勤務間インターバル制度の新設
    勤務間インターバル制度は、現在努力義務とされていますが、法的な義務とすることが想定されています。インターバルの時間は11時間以上と考えられています(12時間以上にすると、2交代制の業務がうまく回せないとの指摘があります。)。

実際の業務に影響を与える可能性が大きい改正であり、注視していく必要があります。

宮崎 寛之(みやざき ひろゆき)
【成田法律事務所】
所属弁護士:宮崎 寛之(みやざき ひろゆき)

プロフィール
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院修了。日弁連裁判官制度改革・地域司法計画推進本部委員。平成29年度千葉県弁護士会常議員。主に、交通事故、労災事故、相続、離婚・不貞問題、債務整理、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行うと共に、千葉県経営者協会労務法制委員会等の講演の講師も務める。

交通事故解決事例

1 相談までの経緯

夫と二人暮らしをして主に家事を担ってきたⅩさんは、買い物から自宅に帰る途中の幅の狭い道路において、後ろから来た車に右肩を接触されました。Ⅹさんは、高齢であったこともあり、接触時に転倒しないよう力を入れたところ、身体に負荷がかかり、その結果、右肩だけでなく首などにも痛みが生じ、通院を余儀なくされることとなりました。半年以上の間通院を続け、治療終了後、相手方保険会社から示談金額が提示されましたが、それまでの相手方保険会社の対応にも不満があるXさんは、提示金額で示談することに納得ができず、当法人にご相談にいらっしゃいました。

2 示談金額の提示内容

相手方保険会社から提示された金額は、Ⅹさんの怪我の程度や治療期間をふまえると低額なものであり、特に休業損害と傷害慰謝料の額はいわゆる自賠責基準をベースに算定された最低額を提示するものにとどまっていました。
当職としては、上記2つの事項につき増額交渉を行うことを方針として、依頼活動を開始することとしました。

3 具体的な活動

まず、休業損害について、Xさんは、専業主婦として家事を担っていたところ、本件の事故によって家事労働に影響が生じていたと考えられました。
そこで行ったこととしては、事故の状況、怪我を負った部位、事故前に行っていた家事の内容、事故によって影響の生じた家事、その影響の程度、治療経過に応じてよってどのように変化していったかといった事項をXさんに確認するとともに、それらの事情を記載した書面を作成し、相手方保険会社に対して提示するようにしました。
また、傷害慰謝料については、いわゆる裁判基準をもとに算定し、より高額になるよう増額交渉を行いました。
その一方で本件では、医師から就労や日常生活における行動に制限・禁止事項を設ける判断がされていないこと、治療期間に比して実通院日数がやや少ないことといった不利に働く事情はありながらも、家事労働の制限につき治療経過に応じて逓減率を設けるなど粘り強く交渉を行いました。そうして、何度か相手方保険会社とやりとりを行い、最終的に当初の提示額から3倍以上の金額にまで増額することに成功し、示談することができました。

4 おわりに

多くの方が交通事故に遭うのが初めてで、これからどうすればよいのか、生活はどうすればよいのか、示談金額は相場から言えば妥当なのか、保険会社が言っていることはその通りなのかと様々な不安を抱くものと思います。
今回のように示談提案がされた場合だけでなく、事故に遭ったとき、相手方保険会社の主張に疑問を感じたとき、どうしたらいいかわからないときなど、少しでも気になる点がございましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。

佐々木 英人(ささき ひでと)
【かしま法律事務所】
所属弁護士:佐々木 英人(ささき ひでと)

プロフィール
山形大学人文学部卒業、中央大学法科大学院法務研究科修了。弁護士登録後はかしま法律事務所に所属し、主に、交通事故、労働事件、相続、離婚・不貞問題、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。ご依頼者様にしっかり寄り添い、少しでも早く不安や不満が解消されるよう迅速な活動を心がけている。好きな言葉は「雨垂れ石を穿つ」。

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