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リスク・インシデントの予防管理体制の構築

基本的な体制整備を進めた上で、安全委員会やリスクマネージャーの設置、インシデントレポートシステム、QC活動の実践などをベースとしながら、事業者において、適切なルールの構築が必要です。リスク・インシデントの予防管理体制の構築は、組織全体での取り組みが不可欠です。経営者や責任者など一部職員のみによって進められません。すべての職員が参加し、職員と経営者との連携が必要です。

最も重要なことは、職員一人ひとりの安全の醸成・共有、意見を出し合える風土組織作りです。日頃から、経営者や責任者は現場職員の声を大切にし、課題の検出や対応策の構築、PDCAサイクルに基づき、運用やマニュアルの問題点等について定期的な検証や改善を行うことが重要です。

例えば、重大事故に関するリスクマネジメント委員会を立ち上げた場合、(1)利用者本人リスク・職員リスク・環境リスクを分析の上で、(2)なぜ事故が発生したのかについて情報交換、(3)原因根絶についての話し合いという手順で実施し、この分析過程を議事録として残す必要があります。

大切なことは、現場で得られた情報やデータを速やかに委員会と共有する仕組み、委員会で決定したことを現場に定着させる工夫、委員会の運営が現場のケアサービスの在り方にブレーキをかけたり、他方で現場の方法が委員会の運営を妨げないように、「現場」と「予防管理体制」の連携体制が重要です。

現場の職員が自己判断で委員会に事故やトラブルがあったことの報告を怠ったり、委員会に言われて仕方なく対応しているようでは、連携が不十分です。弁護士として、これらリスク・インシデントの予防管理体制の構築について、法的な視点からのアドバイスなどを担当します。

リスク・インシデント予防対策

1 情報の提供と説明

利用者と事業者の間には情報の格差があります。社会福祉法、介護保険制度の法令では、法令上、重要事項の説明義務が必要とれさています。それらの遵守を前提に、サービス種類や内容、料金について、丁寧な説明をするとともに、利用者や家族の考えをふまえ、納得の上でサービスを開始することが重要です。消費者が事業者と契約をするとき、両者の間には持っている情報の質・量や交渉力に格差があり、消費者の利益を守るために制定された消費者契約法の観点も大いに参考となります。

サービス利用中であっても、継続的に、サービス内容の変更の際には、情報を詳細にお伝えし、利用者や家族の意向を十分に尊重することも求められます。トラブル防止につながるだけではなく、事業者がサービスを行っていくうえで必要な情報を検討し、正確に把握することにもつながり、それが良質かつ安全なサービスの提供にもつながります。

2 情報共有

利用者と離れて生活をする家族にとって、利用者の状態の変化を把握することは簡単ではありません。利用者の状態変化については、認識の「ズレ」が生じやすいものです。家族に利用者の生活を知ってもらい、利用者・事業者・家族で情報の共有や訪問時の話し合いを通じて、利用者や家族の思いや考え、事業者に期待することなどを話し合い、共有することが重要です。

事業者側から働きかけ、誰と、いつ、どのような方法、頻度、時間などを含めて、ルール化も重要です。

3 職員同士のコミュニケーション

組織全体としてリスクマネジメントに取り組んでいく上で不可欠となります。共有すべき情報として、利用者の状態像、サービス提供上の注意点や禁止事項、事故情報、対応策等です。職員の違いによるサービスのばらつきを減らし、また、身体や健康状態の把握により、事故の防止につながることになります。

そして、ケースカンファレンス以外の場面でも、日常的に情報交換や意見交換ができるような場の設定や仕組み化が重要です。

4 職員の負担や心のあり方への配慮

介護は、現場での職員と利用者との人間関係の上に成り立っています。職員も一人の人間であり、決して機械ではありません。きつい言葉や小さなトラブルの背景には職員の体調悪化や心理的ストレスが重なっていることもあります。

夜勤明け時のケアの負担や体調不良の把握に加えて、職場内の連携や人間関係の問題把握も重要です。また、現場の環境が大きく変わった時も集中力を欠くなどの事態が発生します。

職員の状態を把握していない場合やチーム内で十分な連携が取れていない場合、職員に負荷がかかり、「2つ先」のことまで考えながら仕事に取り組むことで手際が悪くなる、ミスが増えるという事態を招きます。シフトの調整やチーム連携の強化なども重要な課題となります。

5 苦情解決への取り組み

苦情はイヤなものでしょうが、事故防止や業務改善のためと捉え、まずは事業者で対応し、解決していくことが重要となります。事業者は、利用者の様々な生活場面にサービス・ケアを提供しており、全ての苦情や要望の応えることは現実的には難しいかと思います。

できないことについては、サービス・ケア提供前・サービス・ケア提供中に利用者やご家族に説明して、納得を得るというプロセスが非常に大切です。

また、苦情の中には、事故の未然防止や危険につながる情報が含まれていることもあります。リスクマネジメントの取り組みのひとつとしてこの苦情解決の取り組みを積極的に行っていくことが求められます。

6 利用者の生活の質維持を

事故トラブルのリスクマネジメントを強化し、職員がリスク管理に敏感になりすぎる結果、利用者の思いや生活の質に配慮ができなくなっては、新たなトラブルや利用者の不満の芽となってしまいます。

事故を防ぐために生活行為を制限するだけではなく、ADL(日常生活動作)を把握しつつ、利用者の生活の意向への配慮が重要です。

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