債権回収
仮差押え
訴訟前に相手の財産を差押え、自由に処分を禁止する手続です(財産のロック手続)。
日本の裁判は争いがないものでも訴訟から判決確定まで2か月以上がかかってしまいます。訴訟において勝訴すれば、判決に基づき取引先の財産を差押えて強制執行をして、売掛金の回収が図ることになります。
しかし、その間、相手が破産してしまったり財産を隠してしまうおそれがあります。
強制執行時に相手が財産を保有していない、保有していた財産は処分後の場合、強制執行は空振りに終わってしまいます。
そのため、強制執行の空振りを防ぎ、債権を保全するため、相手の財産を仮に差し押さえることができる手続きが仮差押えです。
判決などの結論が出る前にいったん相手の財産を仮に差し押さえる手続きのため、「仮差押え」と呼ばれているのです。
仮差押え手続は保全の必要性に加えて、債権額の10~30%ほどの金額を担保金として裁判所に納める必要があります(相手の財産処分権を制限する、虚偽の申立てによる損害の補償という側面から)。
仮差押えの対象には複数の財産がありますが、通常、相手の銀行預金や給与などを仮差押えするケースが多いといえます。
というもの、不動産は金融機関等の抵当権が設定されて剰余価値がない担保になっていることが多いためです。銀行預金は銀行名・支店名と口座名義がわかれば進められますし、給与や役員報酬の支払い元がわかっていればかり仮差押えも容易です。
仮差押えの申立てが裁判所に認められた場合、銀行預金は仮差押え時を基準に自由な払い戻しなどが禁止され、また、相手には給与の一部を支払うことが禁じられます。
後に訴訟で判決を得た場合、判決に基づいてその仮差押え財産を対象に強制執行が可能となります。
仮差押えは、裁判所への提出書面や裁判所での裁判官面接による保全の必要性の説得など、一般の方には難しい書面準備などがあります。仮差押えは相手に秘匿の上で迅速に行う必要があります。
他にも、仮差押えできる財産が複数ある場合の優先順位、仮差押えが空振りしないような工夫などの問題もあります。
また、裁判所の仮差押命令が出された場合は、仮差押えは判決までの間、仮に財産を差し押さえておくという手続きである以上、仮差押申立人は、訴訟提起をする必要があります。この訴訟提起を進めないと、仮差押えを受けた側が起訴命令などの手続きを進めることによって仮差押えの効力が消失してしまうこともあります。
相手の対抗措置にも注意が必要です。
訴訟を見越した仮差押えには極めて実務的な判断・ノウハウが必要になりますので、弁護士への早期相談、依頼が重要となります。